わが子には、自分の好きなこと、やりたいことに伸び伸びと取り組んでほしいというのが親の願いです。それ故に、子どもが自分のやりたい気持ちを押し殺して人に譲っている姿をたびたび目にすると、気になってしまいます。子どもが「譲る」背景にはどのような思いがあるのでしょう。また、親は譲り過ぎるわが子にどのような声がけをしていけばよいのでしょう? 東京都市大学人間科学部教授の井戸ゆかりさんに話を聞きました。

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無理をしている場合は要注意

 友達と遊ぶときに「○○ちゃんが王様役で、僕が家来役だよね」と最初からよい役を譲ってしまう。あるいは、お菓子を買うときに、自分が好きなものではなく、きょうだいが好きなお菓子を指して「これにしよう」と言っている……。幼い子どもがこのように人に譲っている姿を見ると、「本当は王様役をやりたいのでは」「他のお菓子がほしいのでは」と、心配になってしまうかもしれません。

 「『本当にそれでいいの?』と親が気になる気持ちは分かります。でも、同じように人に譲るという行為でも、本当にそうしたいと思っている子もいますし、逆に少し注意が必要なケースもあります」と話すのは、子どもの心理に詳しい、東京都市大学の井戸ゆかりさんです。

 「子どもは3歳ごろまでの間に、大人との遊びを通じて『貸して』『ありがとう』といったやりとりを経験し、人に譲ったり譲られたりすることを学んでいきます。自発的にこうしたやりとりができるようになる時期は個人差がありますが、一般的には3歳以降です」

 3歳以降のこうしたやりとりを見守る際のポイントは「子どもが無理をしていないかどうか」だそう。

 「子どもが本心から『譲ってあげたい』と思っている場合は問題ありません。ですが、本人が無理をしている場合はサポートが必要です。本当の気持ちを表現できずに無理をし、ありのままの自分でいられないことは、ストレスにもなりますし、何よりありのままの自分でいられないことが自己肯定感の低下にもつながってしまいます」

 井戸さんによると、子どもの「譲る」行為には大きく3つのケースが考えられるそうですが、中には親の日ごろの子どもへの対応が、子どもが無理をする原因になってしまっている場合もあるのだそう。また、自分の気持ちを表現できるようになるためのカギもまた、やはり親子の関わりの中にあるといいます。

 次のページから「子どもが気を使い過ぎ?」と気になった際の対応法や、自己表現できる子にするための関わりについて詳しく聞いていきます。