「専業主婦になれればどれだけ楽だろう」と何度も思った
小早川優子さん(以下、小早川) 夫さんは、金融系でかなりお忙しいのですね。
里佳さん(以下、里佳) はい。夜帰宅するのは、早くて22時〜23時、遅いと零時を回ります。平日は、家事はもちろん、子どもとも全く関わりがないです。
小早川 家事育児の分担について話し合ったことはありますか。
里佳 あります。でも夫は、「仕事が大変で家事育児ができないなら、働き方を変えろ」と私に言うんです。妻は社会に出てもいいけど、家のことはちゃんとやって、そのうえで「趣味程度で働いて」と。さらに、「今の会社で社長になる意気込みで働いているなら俺も考えるけど」とも言われます。
小早川 専業主婦の妻に、自分の仕事を全力でサポートしてほしい、というタイプなんですね。
里佳 要は、仕事をしてもいいけど、家事・育児に影響が出るのはNGというスタンス。夫は、「俺は結婚したときからそのスタンスは変わってない」と。彼は、家のローンも含めて、人生の長期的なマネープランをちゃんと組んでいるのですが、妻の稼ぎはほんの少ししかそこに計上してない。
「専業主婦になればどれだけ楽だろう」とも何度も思ったけど、自分が専業主婦になるイメージはどうしても描けない。せっかくここまで築いてきたキャリアもあるし、悔しいですよね。結果、一人で頑張るしかないのが現状です。この状態が続くと、体もきついし、心も病んでくる。実際、何度かパンクしました。私が倒れたら、すべてが回らなくなって、子どもに影響が出るという危機感も常に持っています。
小早川 これはなかなか手強い。2~3週間でどうこうできるケースではありません。成功しても2年ぐらいはかかるかもしれません。交渉は劇薬ではなく、漢方薬。小さい交渉を積み重ねることで徐々に効いていき、最後にうまくいく、というものです。私自身も、ワンオペを解消するのに5年かけた経験があります。
夫は交渉上手、でも相手を打ち負かす“古典的な交渉”
里佳 すごく議論が得意な人で、私が何か主張しても必ず言い負かされるんです。
小早川 夫さんのほうが一枚うわ手な感じですね。夫さんは仕事でも常に交渉事をやってるのではないでしょうか。妻の性格や状況を完全に把握していて、妻がギリギリ頑張れる状況を分かってやっている感じがありますね。
ただ、彼が行っているのは古典的な、相手を打ち負かす「ウィンルーズ(Win-Lose)」(以下、W−L交渉)です。この交渉方法は短期的にはうまくいきますが、長期的に、特に関係の近い人との間では、関係を悪化させる交渉方法です。彼が今使っている交渉方法が、家族関係を良くするには不向きであることを知ってもらうのも良いかもしれません。
私が教えている「ウィンウィン(Win-Win)交渉術」(以下、W−W交渉)」は相手も自分も、利益を得られる交渉です。夫さんに見えるように、W−W交渉についての資料をテーブルなどに置くのも手ですね。