「私達は『子育ち』という言葉をよく使っています。これは子どもが自分で育つ力のこと。大人が悩むのは『子育て』ですよね。『子育てが大変』『子育てに困った』――全部、大人視点の言葉です。でもそうではなくて、子どもがどう育ちたいのか、どんな力がどう発達していくのか、ということを子どもの視点に立った言葉で表したのが『子育ち』です」
積水ハウス総合住宅研究所の河崎由美子課長はこう話す。河崎さん達は子どもの発達の分野を「感性」「身体」「知性」「社会性」の4つに分けて研究している。その結果、空間が子どもの発達をフォローしてあげられることは、とてもたくさんある、ということが分かってきた。
「どんな家でも、子どもは勝手に育つ面もありますが、子どもの育ちを後押しするための空間や、子育てをラクにするための間取りの工夫があるのです」
「例えば『子どものテリトリー』という大切な考え方があります。子どもが大きくなるにしたがってこのテリトリーは形を変え広がっていきます。どんな所で遊び、自分の持ち物をどこにしまい、どこで学ぶのか、という『子どものテリトリー』を住まいの中にちゃんとつくってあげることが、子どもの発達のうえで重要なのです」
発達に合わせて、段階的にテリトリーを広げていく工夫が大切。だから、リビングで多くの時間を過ごしていた子どもに、「二階の子ども部屋を使ってみたら」と言ったりすると、ストレスが生じるのだという。