拓也と菜々の新居を訪問した帰り道。麻衣と愛美、北川、坂東の4人は、駅前のショットバーで久しぶりに飲み、新人時代のノリを懐かしむ。仕事と家庭を立派に両立させる愛美を、自分でも不思議なほど尊敬する麻衣。それとは真逆の道を進む麻衣は、こんなはずじゃなかった…と、何ともいえない気持ちに――。

【これまでのお話】
プロローグ 新連載・小説「ミドルノート」同期の男女の生き方描く
第1話 新居に同期が集まった夜
第2話 同期会解散後、夫の口から出た思わぬ一言
第3話 妻を無視する夫 「ほんと鈍感だろ、こいつ」
第4話 「妊婦が人を招くなんてドン引き」夫の言葉に妻は
第5話 言っちゃ悪いが無味乾燥で、寒々しい新居だった
第6話 充満するたばこの煙が、昔の記憶を呼び覚ました
第7話 正直言って、事故みたいに始まった恋愛だった←今回はココ

■今回の主な登場人物(食品会社の同期たち)■
板倉麻衣…5年ほどで会社を辞め、WEBライターとして活動中。新人時代に拓也と付き合っていたことがある
江原愛美…同期の中では早く昇進し、産休・育休を経験したワーキングマザー
坂東、北川…同期の男子メンバー
三芳拓也…新人時代に麻衣と付き合っていたが、現在は同期である菜々の夫

「こんな時間に外で飲むの何億年ぶりって感じ」

 たばこを吸い終えた愛美は、生ビールをごくごくごくと飲んでから、

「あー、おいし!」

 と言った。

 その言い方が、いかにも実感がこもっていて幸せそうに響いたので、麻衣はつい笑ってしまう。

「CMみたいに飲むんだな」

 北川も笑う。

「いや、最高。ていうか、もう、外の店で飲めるだけで最高」

 感慨深げに愛美が言った。

「あー、やっぱ、子どもが小さいと夜に外出できないって言うよねえ」

 麻衣が言うと、

「うん。こんな時間に外で飲むの何億年ぶりって感じだよ。仕事でも、今は、出張とか接待的なものはだいたい他の人にお願いしてるし」

 と、愛美が答えた。

「ほんとよくやってるよ、愛美は」

 麻衣は心を込めて言った。本当にそう思った。愛美は外で会社員、家で母親業と、2つの仕事を抱えているのだ。すごすぎないか?

 先ほど菜々の家で飲んでいたとき、愛美が少しだけ自分の話をしてくれた。

 彼女の夫は、飲食店に勤めており、出勤が遅い分、帰宅も遅い。共働き対策で実家のそばにマンションを買ったというのに、愛美のお母さんは少し前に体を壊し、とても孫の面倒を見られる感じではなく、むしろ介護が必要なくらいだという。お父さんはまだ現役で働いていて、いざというときに子どもを預ける場所はない。

 「一人何役もこなしているよ」と笑いながら言う同期の姿に、いまだ母親に洗濯をしてもらい、ベッドを整えてもらい、3食作ってもらえている実家暮らしの麻衣は、恥ずかしくなったのだ。

次ページから読める内容

  • 愛美に対してだけは、そういう気持ちにならない
  • はっきり言って事故みたいな感じで始まった恋愛だった
  • こんなはずじゃなかった

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