数年前、拓也と菜々の新居に呼ばれた同期の仲間たち。菜々に香水をプレゼントした麻衣は、帰り道、参加したメンバーの1人・彩子から声をかけられる。落ち着きのある愛美と、軽いノリの板東。彼らと何気ない会話をしているうち、麻衣は自分が抱いたある違和感に気が付く――。

【これまでのお話】
プロローグ 新連載・小説「ミドルノート」同期の男女の生き方描く
第1話 新居に同期が集まった夜
第2話 同期会解散後、夫の口から出た思わぬ一言
第3話 妻を無視する夫 「ほんと鈍感だろ、こいつ」
第4話 「妊婦が人を招くなんてドン引き」夫の言葉に妻は
第5話 言っちゃ悪いが無味乾燥で、寒々しい新居だった←今回はココ

■今回の主な登場人物(食品会社の同期たち)■
板倉麻衣…5年ほどで会社を辞め、WEBライターとして活動中。新人時代に拓也と付き合っていたことがある
江原愛美…同期の中では早く昇進し、産休・育休を経験したワーキングマザー
岡崎彩子…同期ではないが三芳菜々と同い年で、隣の部署で働いている事務職社員
福田沙織…入社後数年で結婚、退社し海外で主婦に。現在は帰国している
坂東、北川、西…同期の男子メンバー
三芳菜々…食品メーカーに同期入社した拓也と結婚し、妊娠中
三芳拓也…菜々の夫

麻衣はなんだか物足りなかった

 生暖かい風が首筋を通り抜けてゆく。晴れた夜空に爪先のような形の月がすっと浮かんでいる。

 暗く静かな住宅地を、遠足みたいにぞろぞろと歩く大人7人の、最後方に麻衣はいた。

 新婚の同期の新居に呼ばれた帰り道だった。

 前方で、「楽しかったねえ」「ほんと」「また集まりたいね」……など、同期グループの愛美たちが無邪気な声で感想を言い合いながら歩いている。集まるのは久しぶりだったから、皆、別れがたい気分なのだ。住宅地なので少し気を使いながらも、話し足りないとばかりに盛り上がっている。

 まだ午後9時過ぎだ。ホストの菜々が妊婦だから、何となく皆が気を使って早めに解散したのだが、麻衣はなんだか物足りなかった。昔は日付が変わるまで平気で飲み歩いていた仲間たちなのに。家庭を持つ同期も少しずつ増えてきて、皆の中にうっすらとした健康志向が感じられる。昔みたいに、朝まで飲み明かすようなノリは消えてしまったようだ。

 彼らの姿を視界に入れつつ、麻衣はさらに少し歩みを遅らせて、スマホをチェックした。

 画面の中に、見ていなかった時間分の通知がたまっている。

 今日は三芳と菜々の新居を訪ねる直前に、【自分がもらったらうれしい手土産を持っていく】というブログ記事を書いた。今日、実際に三芳と菜々に渡した手土産の入手先を記した記事で、いくつかのSNSのアカウントで手広く宣伝していたのである。

 そこではもちろん自分が作った香水の宣伝もした。

次ページから読める内容

  • 「有名なライターさんだって本当ですか」
  • 自分のことを分かっている子だな
  • 「彩子ちゃん、いい子だよね」
  • どうして今まで気づかなかったのだろう

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