地方都市の場合、受験して入る中学がそもそも少なく、子どもたちは小学校を卒業すると、そのまま地元の公立中学に進み、高校に入る際に初めて受験する、という流れが一般的。高校も公立が圧倒的に強いのが普通です。そんな地方育ちの親からは、「なぜ、首都圏では中学受験がこんなにメジャーなの?」「私立はお金がかかるのに、あえて入れるのはなぜ?」といったとまどいの声も聞こえてきます。そんな地方出身親が抱きがちな疑問の声に答え、中学受験をするかしないかを判断するために必要な基本知識や首都圏の最新受験事情について、中学受験や高校受験に詳しいQLEA教育事業部部長の石井知哉先生にQ&Aの形で5つの質問に対し、解説していただきました。

【中学受験する?しない? 「わが家の正解」を考える 特集】
(1) 中学受験 親が知っておくべきメリット・デメリット
(2) 性格・お金…中学受験するか否か6つの項目で判断
(3) 地方出身親必読!首都圏の最新「中学受験」事情 ←今回はココ
(4) アンケートで判明!受験した&しなかった親子の本音
(5) 中学受験しないと決めたら 気になる公立の学習環境
(6) 拡大する大学AO入試 「細く長い」探究心が強みに

私立の数が増え、幅広い学力の子が中学受験をする流れに

 Q1 
「首都圏ではなぜ中学受験が盛んなのでしょうか。地方であれば、『地元の公立中学→公立高校』というルートが一般的なので、親の心理的負担も経済的負担も少なくて済みます。首都圏で、地方と同じようなルートを考えるのはNGでしょうか」

 A1 
 「公立コースを行くことがNGか否か、とマイナスに捉えるのでなく、首都圏には公立コースを行く以外にも選択肢がたくさんある、とプラスに考えることをおすすめします

 首都圏でも、昔は私立中学の数が少なく、中学受験はクラスの中でも成績が上位で、いつもテストで100点を取るような子だけが受けるというイメージがありましたが、今は数多くの私立中学が存在し、成績がトップクラスだけでなく、幅広い学力の子が受ける時代に変わってきました。

 生徒の獲得競争がし烈なので、他校との差別化を図ろうと、努力して教育カリキュラムを充実させているすばらしい学校も多い。校風も様々なので、わが子にあった学校を選ぶことができます。最近では公立の中高一貫校もあります。様々な中学校を検討したうえで、進学先を決めることができるのは、恵まれた環境ともいえるでしょう。中学受験をするかしないかを考える際には、まず、選択肢としてどんな学校があるのか、わが子に合っているのはどこか、といった視点で、じっくり比較検討することをおすすめしたいですね。

 一つ注意しておきたいのは、今、教育の世界が激変期にあり、学校もすごいスピードで変化しているということ。女子校や男子校が共学になることも多々あり、本当に変化が早いと感じています。数年前の情報や評判は判断材料にならないので、学校の公開行事などをどんどん利用して、自分で実際に足を運び、自分の目で最新情報を得ることを心がけていただきたいと思います」

 Q2 
「首都圏だと、女子は高校から受験できる学校の選択肢が少なく、偏差値が極端に高い学校か極端に低い学校のどちらかしかない、といったウワサを聞きます。『女子は中学受験以外の選択肢がない』などと言う人もいます。それって本当ですか?」

<次のページからの内容>
●女子が高校受験する場合の選択肢は?
●都立トップ校にはなぜ優秀な生徒が集まる?
●そもそも中高一貫校のメリットとは?
●「入試に落ちるほうが幸せなこともある」理由
●共学と男女別学、どちらが正解?