「何となく様子がおかしい」「もしかして、いじめられてる?」と思ったときには子どもに直接聞いてみるのは大事なことだろう。早めに手を打つことによって、いじめが進行する前に芽を摘むことができるかもしれない。
しかし、前回でも紹介した通り、子どもにとっていじめを打ち明け、状況を説明するのは難しいことだ。子どもへの上手な聞き取り方法について、専門家に話を聞いた。
親の「聞く力」が、精神的回復力の高い子を育てる
子どもの気持ちを言語化するために、有村教授が勧めるのは「スクールカウンセリング」の手法だ。カウンセリングといっても病気のように原因を突き止めて治療するのではなく、子どもの気持ちに寄り添い、子ども自身が問題を解決する力を引き出すことが目的。
「『○○くんにイヤなことをされた』と打ち明けられたときに、『やりかえしなさい!』『やめてって言いなさい』と指導するのではなく『そうか、そんなことされて悲しかったね』とじっくり聞いてあげること。さらに『そんなことされると○○くんのこと苦手になっちゃうね。いじわるされると、宿題も習い事も集中できなくなっちゃうね』など、子どものモヤモヤした気持ちを分かりやすく言語化して、引き出してあげるところまでやってみてください」
親が言語化した「モヤモヤ」が自分の気持ちと一致していたとき、子どもの心はぐっと晴れてくる。気持ちをすっきりさせた後で、「あなたはどうしたい?」と、今後の対処法を考えるよう促すのが、スクールカウンセリングのやり方。「イヤなことはしないでって、○○くんに直接言う」「先生に相談してみる」など、子ども自身がいじめをどう解決したいのかを導き出してほしいと有村先生は言う。
「自分で『気持ちの処方箋』を持つことができると、逆境に打ち勝つ力が高くなる。はやりの言葉で言うと、精神的回復力、つまり『レジリエンス』の高い子になれると言えるでしょう。反対にレジリエンスが低い子は、いつまでもイヤな出来事を引きずってグズグズと悩んでしまい、なかなか情緒も安定しません」
読者アンケートには、いじめに対する「気持ちの処方箋」を持てたとも取れる回答も。
自分で自分の問題を解決できるような子にしてあげること。これはいじめ問題でなく、その後に待ち受ける受験や就職などの人生の転機や、あらゆる人間関係の問題に応用できるだろう。
次ページから読める内容
- 高学年の子にやりがちなNGカウンセリング
- 話がグチャグチャになりがちの子には「描いてみせる」のが有効
- 「いじめられている子がクラスにいる」と打ち明けられたら?
- 小さなサインに気づける親になって