できないことは正直に伝え、焦らず長い目で転職活動を

「残業が一切なく、前職から年収も下がらない外資系企業。その条件に飛びついてしまった」(稲川さん)
「残業が一切なく、前職から年収も下がらない外資系企業。その条件に飛びついてしまった」(稲川さん)

―― ご自身の失敗を踏まえて、今後転職を考えているワーママ読者にアドバイスをお願いします。

稲川 転職活動中はどうしても採用してほしいという気持ちから、自分をよく見せてしまうことがあります。でも無理なことは無理。自分のスキルや勤務時間などの限界値を知っておき、面接のときに正直に伝えることが大切だと思います。

 スキルが足りなくても、独身時代だったら残業をして時間でカバーできたかもしれない。でも、ワーママにはそれが難しい。特に異業種に転職する場合、会社が自分に求めているものが何かを踏み込んで聞いてみて、それに本当に応えられるかを見極めることが、成功につながるのではないでしょうか。

小野 ワーママの転職は「完璧を求めすぎないこと」が大切だと思います。業務内容も働き方も勤務時間も年収も、すべてが希望通りにいくものではない。自分の中での優先順位をはっきりさせて、優先順位が低いものは切り捨てる必要があると思います。

阿部 子どもを保育園に通わせている間は、発熱などの呼び出しに対応できるように、自宅と保育園、職場の3つを近いエリアにまとめておいたほうが楽だと思います。自分のキャリアアップも大切ですが、親など近くに頼れる人がいない場合は、緊急時に備えられるように転職先を考えると、子育てとの両立がうまくいくのではないでしょうか。

 焦らないことも大事です。今、私は44歳ですが、65歳の定年まで働くことを考えると、まだこの先20年もある。それまで仕事はずっとできるわけですが、小さな子どもを育てることは今の自分にしかできない。子どもが乳幼児の時期の大変さは、その渦中にいるとそれが永遠に続くような気がしてしまいますが、実際にはそうではありません。ですから、子どもが成長したときに自分がどうありたいのか、先々を見据えて行動した方がよいと思います。仕事だけでなく「子育て」という観点からも、後悔をしない働き方をしたいと思っています。

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 転職の失敗経験を持つワーママ達3人の座談会、いかがでしたか? 今回登場いただいた3人から学べる教訓は……

●現職に不満があるからといって、焦って転職先を決めないこと
●勤務条件の自分の中での優先順位を明確にしておくこと
●求人票上の情報だけでなく、現場の実情を確認して判断すること

 といった点が挙げられそうです。今、大変な仕事や育児の状況を変えたいがためだけの「焦り」と「逃げ」によりその場しのぎの転職をしてしまうと、誤った選択をしてしまい、すぐにまた次の転職活動を始めなければならなくなるかもしれません。

 子どもは日々成長し、ママ自身も歳を重ね、仕事にかけられる時間とパワーやスタンスも変わっていくもの。ワーママとして自分が将来どうありたいかを見据えた落ち着いた転職活動こそが、納得のいく転職先を見つけるカギになるのではないでしょうか。

 次回は「ワーママ転職 子どもの有無を履歴書に書くべきか?」をお届けします。

(ライター/西山美紀、撮影/鈴木愛子、編集/ひきたりやこ)