子どもたちが散らかした玄関の靴をそろえるのに30秒、トイレ掃除に5分、毎日の食器洗いに10分、洗濯物を干して取り入れたたんで片付けるのに30分……。1つ1つの家事時間はそれほど長くはなくても、終わることのない家事に向き合う時間は積み重ねると膨大な時間に。仕事をしながらこれらすべてを完璧にこなすなんて、そもそも無理があるというものです。

これからの共働き家庭で大切な発想は、ママもパパも「しないこと」を増やすこと。取捨選択をして諦める、アウトソーシングをして上手に任せる。家事のスリム化を進めた結果、家族との時間が増えるとうれしいですよね。「しない上手、任せる上手」になるためのコツやアウトソーシングの最新事情を紹介します。

 前編では、4カ月半育休を取り、ベストセラー『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』を手掛けた梅田悟司さんと、男性の育児参加に詳しいジャーナリストの治部れんげさんが、目に見えない膨大な家事があるということ、夫婦が相互に敬意を持つことで、家事分担やどこを取捨選択するかの話し合いができる、という話を展開しました。後編では、「わが家のルールづくり」を紹介します。

家事は「家のこと」二人でやってちょうどいい

梅田悟司(以下、梅田):日本人男性は先進国の中でも家事育児にかける時間が極端に少ないと言われてきましたが、少しずつ変わってきていますよね。北陸など、もともと共働き率が高い地域には、夫婦で家事をこなすのが当然だと思っている人も多いそうですよ。

治部れんげ(以下、治部):積水ハウスの『イクメン白書 2019』によると、最も家事育児時間が長かった島根県の男性は1週間あたり18.21時間で、フランス並みの数値でした。日本人全体をひとくくりにして家事をしない夫を責めるのではなく、その家ごとの現状をミクロで見たほうが状況は好転するのではないかと思います。

 以前、平等に家事を分担している米国人夫婦にインタビューをしたとき、男性に「なぜ家事をするのか?」と尋ねたら、「一人では抱えきれないくらいたくさんあるから」という答えが返ってきました。家事や育児をしていると、一人ではもちろん、二人でも手が足りないこともありますよね。そういう認識を持つことが初めの一歩になるのかなと。