子どもたちが散らかした玄関の靴をそろえるのに30秒、トイレ掃除に5分、毎日の食器洗いに10分、洗濯物を干して取り入れたたんで片付けるのに30分……。1つ1つの家事時間はそれほど長くはなくても、終わることのない家事に向き合う時間は積み重ねると膨大な時間に。仕事をしながらこれらすべてを完璧にこなすなんて、そもそも無理があるというものです。

これからの共働き家庭で大切な発想は、ママもパパも「しないこと」を増やすこと。取捨選択をして諦める、アウトソーシングをして上手に任せる。家事のスリム化を進めた結果、家族との時間が増えるとうれしいですよね。「しない上手、任せる上手」になるためのコツやアウトソーシングの最新事情を紹介します。

 貴重な週末が、「家事で終わってしまう」のには理由がありました。その理由をコピーライターの梅田悟司さんと、ジャーナリストの治部れんげさんの白熱トークで見ていきましょう。

なぜ夫は「家事で1日が終わる」を理解できないのか

梅田悟司(以下、梅田):正直に白状をしますと、僕は以前は家事をしていませんでした。当然、料理もたまにする程度。調味料の場所は、そのたびに妻に聞く。深夜まで残業をして、帰宅後は食べて泥のように眠る。起きている妻と話せたときには、「毎日こんなに遅くまで何の仕事をしてるの?」と言われるくらい、仕事に没頭していたんです。

治部れんげ(以下、治部):でも、先日執筆された家事をテーマにした書籍『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)は、主婦エッセイストが書いたと思われそうなくらいリアルな内容でした。浴室仕事をしようと、お風呂の床が乾いていると思って浴室に足を踏み入れたら、靴下がじんわり湿って洗濯物を増やしてしまった描写とか「あるある!」と思える内容ばかりで、9歳のうちの息子も読んで大笑いをしていました。

梅田:自分が家事をするまで、全く気が付いていませんでした。でも実際のところ家事は無限にあって、一つひとつこなすたびにまた次があるのかとストレスがたまっていきますよね。しかもやっかいなことに、名前のついていない家事が大半を占めていて、なかなか家族には説明できない。

治部:家事にどれだけ時間がかかり、どれほどのストレスがたまるのかは、実際に自分で経験しなければ分からないことですからね。極限まで仕事に時間をささげていた梅田さんが家事の大変さに気づいたのは、やはり育休を取得したからですか?

梅田:まさに、そのとおりです。4カ月半の育休を通して、ようやく「家事で一日が終わる」という感覚を理解しました。共働きをしていると、貴重な土日の週末が家事や掃除でつぶれてしまう、という女性の声も分かりました。そして、何も言わずに家事をこなしてくれていた妻へのリスペクトが生まれたんです。仕事から帰宅するとご飯ができている、部屋が片付いている、子どもが安らかに寝息を立てている。これって実は奇跡のようなことだったんだなと。

 そこで、この奇跡に気付く人を一人でも増やすためにコピーライターの自分が名前を付けようと思ってこの本を執筆しました。もし夫に「今日は家で何してたの?」と聞かれたら、この本をそっと差し出してほしいなと思っています。