中学受験をする、しないという決断は、親子にとって悩ましい問題です。「子どもの可能性を伸ばしたい」「よりよい教育を受けさせたい」という親心は不変。とはいえ、先の見えない世の中で、小学校高学年という人生の大事な時間を「合格をゴールにした勉強」に費やすこと、それに数百万円を投じることが本当にいいのか、迷う親もいるでしょう。「まだ子どものうちは好きなことに熱中してほしい」「中学受験後に燃え尽きた例を知っている」などがモヤモヤの一因であるという人もいるかもしれません。本特集では、「中学受験をしない」という選択肢について、主体的な軸を持って考えてみます。

 「中学受験『しない』という選択肢」について掘り下げた本特集も本記事が最終回。ユニークな教育方針を持つ父親のもとで育ち、公立の小中を経て、高校を中退、京都大学に進学した探究学舎(東京・三鷹)代表の宝槻泰伸さんに、「中学受験をする、しない」について、また、子どもの「好き」を応援するという選択肢について、話を聞きました。

一番よくないのは、「親の不安」から出発すること

 宝槻さんは、未就学児から小学生までの5人の子を育てる父親でもあります。「私は子どもたちの『好き』を応援したいです。子育てをしながらこの10年間で『自分の子どもたちを高学歴にしたい』といった気持ちは“成仏”させました。一番よくないのは、『親の不安』から出発して、親の不安を埋めるように、決めてしまうこと。親の不安を解消する保険のために中学受験用の塾に通わせることで、子どもが好きな習い事を諦めたり、夢中になっていることができなくなったりすることには違和感があります」

 宝槻さんは、さらにこう指摘します。「時代が変化している今、高学歴であることの価値は目減りしていると考えられます。一方で、学力・学歴にかわる『クリエーティビティー』が大事になっています」。子どもの「好き」を親が応援することが、クリエーティビティーを育む上で大切だという宝槻さんに、それらの理由を次ページから詳しく聞きます。

次ページから読める内容

・「固定的モデル」「オープンモデル」どちらを信じる?
・「親の不安」がスタート地点になっていないか
・「学力・学歴」にかわるものは?
・「好き」に成果を求めなくていい理由
・教育改革が進む「過渡期」だからこそのモヤモヤをどう解消すればいい?

「中学受験を子どもにさせたい親」2つのタイプ

 親が中学受験を子どもにさせたい理由について、宝槻さんはこう現状分析します。「それぞれ多様な理由があると思いますが、大きく2タイプに分けられます」