中学受験をする、しないという決断は、親子にとって悩ましい問題です。「子どもの可能性を伸ばしたい」「よりよい教育を受けさせたい」という親心は不変。とはいえ、先の見えない世の中で、小学校高学年という人生の大事な時間を「合格をゴールにした勉強」に費やすこと、それに数百万円を投じることが本当にいいのか、迷う親もいるでしょう。「まだ子どものうちは好きなことに熱中してほしい」「中学受験後に燃え尽きた例を知っている」などがモヤモヤの一因であるという人もいるかもしれません。本特集では、「中学受験をしない」という選択肢について、主体的な軸を持って考えてみます。

 「中学受験をしない選択肢」として「別の学び」を考えたとき、頭に浮かぶものの1つは「英語」かもしれません。今回の記事では英語塾「キャタル」代表の三石郷史さんに、近日公開の後編では、英語塾「エベレスト」代表の齋藤孝夫さんに、「英語を学ぶ」選択肢の是非、やみくもに学んでも仕方がない理由、どういう学び方を目指すべきなのか、その先に何があるのか、などについて具体的に聞きました。

【前編】中学受験の代わりに「英語を武器にする」選択肢 ←今回はココ
【後編】高学年から英語を勉強するなら思考力伸ばす学び方を

学びをリスペクトしている環境で学ぶことの価値

 三石さんは、塾の生徒たちの説得力のある手本になろうと、40代半ばで海外留学に初挑戦。出願要件のTOEFL100点を上回る102点を取得し、米国のマサチューセッツ工科大学に2018年に進学、2020年6月に卒業しました。

 「同級生の最年長は65歳の起業家の女性でした。米国の大学には、学ぶこと自体や、学び続ける人へのリスペクトがあると感じました。留学中は、軽自動車でF1サーキットに入ってしまったように大変でしたが、日本のように学歴をリスペクトするのではなく、学びをリスペクトする環境やコミュニティに身を置いて学ぶことの価値を実感しました。そういう世界を日本の子どもたちにも体験してほしいと改めて思いました」

 三石さんは、地方の公立の小中高を経て、慶応義塾大学卒業後、外資系証券会社に入社。それまで学校教育や受験英語で学んだ英語が使い物にならず、苦労した経験から、2002年に小中高生向けの英語塾キャタルを創立しました。

 「小学校高学年の時期に、中学受験のために国算理社の4教科を勉強するのか、あるいは、英語に時間をかけるのか、悩む価値のある問いだろうと思います。英語力があれば、中学受験をしなくても、高校受験や大学受験を有利に進められるという考え方もあるからです」

■英語力があれば、中学受験をしなくても、高校受験や大学受験を有利に進められる理由
→2ページ目で詳しく解説

■高学年から英語を本格的に学ぶ場合、どんな目標を意識して、どのような学び方をすればいいのか。押さえたいポイントは?
(1)「アカデミック・イングリッシュ」を目指す
(2)「受験や試験のための英語教材」から距離を置く
(3)英語を「英語で仕入れる」ことを意識する

→3ページ目以降で詳しく解説
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