オンライン授業やオンライン留学、リモートワークでは、画面越しに相手と議論を交わしたり協業したりすることが求められます。必要に応じて自分の意見を的確に伝え、存在感を示すためのスキルは、今後AIに取って代わられない能力としてますます注目を集めていくはずです。未就学児から身に付けたい「伝わる話し方のコツ」や、ビジネスパーソンであるママ・パパの仕事にも役立つ「クリティカル・シンキング」など、親子で取り組みたいスキルアップノウハウをお届けします。

オンライン会議に苦手意識を持つ人も

 新型コロナウイルスの影響で、習い事や塾の授業がオンラインで行われるケースが増えてきました。緊急事態宣言が出された地域では、再びテレワークの比率が高まり、オンラインの会議や打ち合わせが増えていることでしょう。

 しかし、オンラインでのコミュニケーションに戸惑う声も少なくありません。気心の知れた仲間となら平気でも、慣れない相手とのオンライン会議では、「意図がうまく伝わらず、もどかしさを感じる」「いまひとつ盛り上がらない」「会話に入るタイミングがつかめず、聞き役に回ってしまう」「みんなのリアクションが薄くて不安になる」――といったモヤモヤを抱きながら、悪戦苦闘している人も多いのではないでしょうか。

 オンライン会議は、場所を選ばず開催できるなどのメリットが多数ある一方、先ほど紹介したようなデメリットを指摘する声もあります。その理由を、日本ファシリテーション協会フェローで組織コンサルタントの堀公俊さんは、こう指摘します。

 「リアルでの会議の場合、会話の掛け合いのなかで発見や気づきがあり、その相乗効果によって新しいアイデアやイノベーションが生まれていくものです。これが対面コミュニケーションの醍醐味でもあります。ところが、オンライン会議の場合は、一度に複数の人が発言しづらい仕組みで、掛け合いが生まれにくく、結局は『質問する人と答える人』という1対1の構図になりがちです。議論が深まりにくく、腹落ち感のないまま終わることがあると指摘されています」

 その背景には、日本人特有のコミュニケーションの傾向があるといいます。

 「もともと日本には、人と会話をするときに、『あうんの呼吸』や『空気感の共有』といった非言語のコミュニケーションで意思疎通を図る文化があり、言葉だけで意見を伝えることに慣れていません。それに加え、何を言ったかではなく、誰が言ったかに影響される『属人傾向』や、他人の意見に合わせようとする『同調傾向』があり、周りの顔色をうかがいがちです」

 次のページからは、慣れない相手とのオンライン会議で自分の意見を上手に伝えるコツを紹介。3ページ目からは、自分が会議などでファシリテーターを務めることになった場合に、メンバーの意見をうまく引き出すアイデアを紹介します。また4ページ目では、これから多様な意見に触れていく子どもたちに伝えたい大切なポイントについて聞きました。