ワーママの在籍数やサポートの充実度が企業価値に

 女性の採用という観点では、女性活躍推進やダイバーシティの課題もあります。「今後、企業における年齢や性別、障害、国籍などのダイバーシティはもっと広がっていかないといけません。それらの中では、性別格差の解消に向けた動きは先行しています。34歳の女性が首相に就任して話題となっているフィンランドなどに比べるとまだまだ低いですが、恣意的に管理職における女性の割合を上げようという意思のある会社も増えています」(黒田さん)

 大浦さんもこう話します。「ワーママの在籍数や、サポート体制の充実度が、採用競争力になったり、企業価値の向上につながったりもします。中長期的に言えば、上場企業は女性管理職や女性役員をどう増やすか、を意識しています。欧米の例を見ると上場企業の女性役員比率は株価に直接影響しますから、中途採用においてその点を視野に入れている企業はあります。

 一部のハイキャリアの人の話ではありますが、例えば、世界的に名の知れた大企業から、女性幹部候補生の採用を想定した求人がここ2~3年は何件もありました。そういう求人が出るとムーブメント的にほかの会社も呼応して、女性を積極的に採用していこうという動きになります。実際、ハイキャリアとまでいかなくても普通に働いている30~40代の女性総合職の採用に乗り出す企業例は増えています」

確実に女性のポジションは増えている

 ワーママの転職環境が好転しているのは、一部の大企業限定の話なのでしょうか。

 「もちろん、ワーママへのフォロー体制が整っていない従来型の中小企業などで、ママであることが中途採用においてネックになる場合もあるかもしれません。トップの意思で積極的に女性を採用している会社もありますが、思想があっても支えるツールや仕組みがないケースもある。大企業のほうが、テレワークの環境やシステム投資、ジョブの切り出し、突然子どもが熱を出したときのフォロー体制の構築などに取り組みやすい実態はあると思います。

 フラットに見て実力値が同じ、そのうえで残業ができない人と、残業ができる人とを比較すれば、時間をプラスして働ける人のほうがアウトプットは多そうなので採用する、という会社は依然として少なくありません。ただ、企業によっては、女性社員比率や、女性管理職比率の問題もあるため、実力が同じであれば女性を取ろうという傾向もあります」(大浦さん)

 黒田さんもこう話します。「確実に女性のポジションは増えていますし、今後も増え続けていくでしょう。女性活用×働き方改革の効果で、過去と比べて、これほどワーママにとってチャンスといえる環境はないと言えます。この先ももっと環境はよくなっていくはずです。その中で自分がどういう未来を選択して、どういう付加価値を発揮していくのかが大切です」

 こうした流れは2020年も続くのでしょうか。