新型コロナに揺れた2020年。弱者になりやすい子育て世帯への支援は、自治体の本気度が問われる部分です。そこで今回の調査では、保育園・学童・病児保育の充実度に加えて、コロナ下で妊娠・出産する妊産婦へのサポート、ひとり親への支援、ICT教育、リモートワーク支援なども評価項目に加え、ウィズコロナ時代の「共働き子育てしやすい街」をランキングしました。

保育所・学童、補助金やサービス内容に加えて、コロナ下での子育て世帯支援も評価

 2015年から毎年行っている、日経DUALと日本経済新聞社による共同調査「自治体の子育て支援制度に関する調査」。今年で6回目となりました。2020年は、希望しても保育所に入れない待機児童の数が過去最少を記録したものの(4月1日時点で1万2439人、厚生労働省発表)、政府が目標としていた2020年度末までの待機児童ゼロ達成は難しい見通しです。また、学童保育の待機児童は、5月1日時点で少なくとも1万8783人と過去最多に(全国学童保育連絡協議会の調査)。保育インフラの拡充が引き続き課題となっています。

 そして今年は新型コロナウイルス感染症も子育て世帯に大きな影響を与えました。4~5月の緊急事態宣言の期間中は、保育施設や学童保育も閉鎖や利用自粛となり、働く親は家で子どもの世話をしながら仕事をするという困難な状況に直面しました。外出や人との交流が制限され、妊娠中の女性や乳幼児を育てる家庭の心身のサポート、ひとり親家庭への支援などが課題に。教育面では学校のICT教育の遅れも明らかになり、自治体には多岐にわたるスピーディーな対応が求められました。

 これらを踏まえて今回は、「共働きをする際に必須となる施設(インフラ)」と「補助(お金・サービス)」のほか、「コロナ下での子育て世帯への支援」の主に3点に着目して調査しました

 上記3つの観点に基づき、最も重視したのは、昨年に引き続き、「保育所入園を希望する人がどれくらい入れるか(入りやすさ)」といった保育所周りの整備状況です。次いで、「子育て世帯に向けた補助・サービス」「学童保育の整備状況」「保育の質を保つ取り組み」「コロナ下での子育て世帯への支援」などをそれぞれ評価しています。

 主な評価ポイントは以下の16です。

<自治体ランキング DUAL評価ポイント16>

1.認可保育所に入りたい人が入れているか
2.認可保育所の保育利用枠の今後の増設状況
3.認可外保育施設などの受け皿がどのくらい用意されているか、利用者への助成はあるか
4.病児保育施設の充実度
5.待機児童ゼロの達成状況
6. 未就学児がいる世帯へのサービス・現物支給があるか
7. 学童保育が充実しているか
8. 保育の質担保への取り組みがあるか
9. 保育士確保のための取り組みがあるか
10. 産後ケアへの取り組みがあるか
11. 不妊治療助成を実施しているか
12. 児童虐待に対応する支援拠点の整備
13. 未就学児が増えているか
14. コロナ下での子育て世帯・ひとり親家庭への支援は充実しているか
15. ICT教育への取り組み
16. テレワーク施設や移住の推進制度があるか

 ランキング集計時には、1から16までの評価ポイントをそれぞれ複数の観点からチェックしました。例えば「1.認可保育所に入りたい人が入れているか」なら、0歳児または1歳児がどのくらい認可保育所に入園できているか、保育所の利用枠(定員)の推移、などを評価しています。

 今回の記事では上記を基に全国151の自治体(詳細は下記カコミ参照)を評価し、点数順にした「総合ランキング(総合編)」を紹介します。上位の自治体の具体的な取り組みは記事2本目で分析します。

 また、地域性の違いを勘案して「総合編」のほかに「東京編」(記事3本目で公開)と「東京を除く全国編」(記事5本目で公開)のランキングも作成しました。記事4本目ではコロナ下の子育て世帯への支援策、6本目と7本目ではICT教育について、先進的な自治体の取り組み事例と、自治体が抱える課題をリポートします。

【調査について】
・調査名:「自治体の子育て支援制度に関する調査」
・調査対象:首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、中京圏(愛知・岐阜・三重)、関西圏(大阪・兵庫・京都)の主要市区と全国の政令指定都市、道府県庁所在地の162自治体
・回答数:151自治体
・回収率:93.2%

※以下の11自治体は調査に未回答でした。【未回答自治体/あきる野市、岡崎市、春日部市、金沢市、川西市、清瀬市、久喜市、草加市、西東京市、秦野市、枚方市(50音順)】