認可保育園などに通う3~5歳児の保育料を無償化する「幼保無償化」が大きな話題となった2019年。待機児童問題への対応も含め、自治体の取り組みはどこまで進んだのでしょうか。2015年から毎年行っている、日経DUALと日本経済新聞社による共同調査「自治体の子育て支援制度に関する調査」を今年も実施。その結果を基に「子育てしながら働きやすい街」をDUAL・新聞独自の指標でランキングしました。

本特集では上位自治体への取材から「子育て政策で結果を出す」ための秘策を紹介。過去5年間の調査で得たデータを基に、今後への課題もあぶり出します。

 今回は、「総合編」で上位にランクインした自治体の特徴を分析します。2位の千葉県松戸市に加え、同点で3位となった東京都新宿区、杉並区についてどんな点が優れていたのか見ていきましょう。

子どもの預け先確保、子育て支援サービスが充実した松戸市

 「総合編」で2位となった千葉県松戸市は、2017年の調査では総合編6位、2018年は同5位と段階的に順位を上げてきました。

 高い評価となった点は、0歳児の保育園への入りやすさ。また、認可保育園の定員を毎年着実に増加させる予定がある点です。政府が2020年度末までに目標としている待機児童ゼロについても、「十分達成可能」としています(詳細は次ページのカコミ参照)。

 今回の調査では2019年10月から始まった幼児教育・保育無償化を受けて、自治体が独自に無償化の対象世帯拡大や保育料値下げの取り組みをしているかもチェックしました。松戸市では指導監督基準を満たした認可外保育施設を利用する家庭のうち、無償化の対象にならない0~2歳児の住民税課税世帯向けに月額上限2万1800円までの補助があります。

 独自の子育て支援サービスも多岐に渡り、例えば小児医療に関しては松戸市立総合医療センターに隣接して、小児科専門医などが18時から23時まで診察する夜間小児急病センターを備えています。病児・病後児保育施設は市内に7カ所。そのうち病院と連携する施設が4カ所、看護士が体調不良の児童に対応する体制を整えた保育園が3カ所あります。子ども向けの健診も充実の内容で、乳児健診では3~4カ月健診、9~10カ月健診に加え、市独自に乳児股関節健診や6~7カ月健診を追加で実施し、費用を助成しています。

 働く保護者が気になる学童保育(松戸では「放課後児童クラブ」と呼ぶ)の体制についても、延長を含む預かり時間は平均19時までと長く、定員も段階的に増やす方針です。そのほか市内27カ所の小学校の図書室などに「放課後KIDSルーム」を設置。授業が終わった後、子どもが校内で安全に読書や学習ができる場所を提供しています。

 保育士確保の対策として興味深いのが「松戸手当」の支給です。2017年から保育士に対し、勤続年数に応じて給与を上乗せしています。現在では月額4万5000円~7万8000円を市が補助。保育士向けの補助金は施設に割り当てられる自治体も多い中、「松戸手当」は保育士個人に直接届くのが特徴です

松戸市の「放課後KIDSルーム」(写真は松戸市提供)
松戸市の「放課後KIDSルーム」(写真は松戸市提供)

 次ページ以降は、松戸市長の本郷谷健次さんに子育て政策の方針や工夫を聞きます。さらに3位の新宿区、杉並区の施策も見ていきましょう。