病児保育の枠はやや増えている

 次に病児保育です。「病児・病後児ともに施設がある」と回答した自治体の割合は、16年の68.0%から19年は76.5%と、8.5ポイント増加。1日の最大収容人数の平均も、19.7人から27.6人へとやや増加しました(下図を参照)。

 病児保育は、共働きの親にとっては欠かせません。ただ池本さんは、「自治体の努力で施設を増やすことだけが解決策ではない」と話します。「海外では病児保育の話をほとんど聞きません。それは、企業の看護休暇制度が整っており、子どもが病気になったときには親が気兼ねなく休めるから。日本は、『子どもが病気になっても仕事に行かねば』という意識が強く、しかもその負担を女性だけが担うケースがまだ多いと感じます。本来は、母親だけでなく父親も看護休暇を取りやすくするなど、企業の働き方改革とセットで考えるべきで、それでも困った場合の受け皿として病児保育が存在する、という形が理想的だと思います」

学童保育はいまだに課題も

 学童保育については、「小3までの希望者全員が学童保育に入れるか」という趣旨の設問に、「いいえ」と回答した自治体(待機児童がいる自治体)の数を比較しました。

 19年4月時点で学童保育の待機児童がいる自治体の割合は50.8%と、いまだに高く、16年の55.8%から5ポイントしか減っていません。待機児童の平均数は15人減りましたが、それでも、希望する全員が学童保育に入れる状況とは言えません(下図を参照)。7割以上の自治体が「3年以内に学童保育の定員を増やす」と回答していますが、子どもの成長は待ったなし。迅速な状況改善が求められます。

 一方、学童保育の預かり時間は、延びている傾向が見られました。学童保育の最長預かり時間(延長含む)の平均が18時31分~19時と答えた自治体は、16年調査では46.9%しかありませんでしたが、19年調査では65.9%に増加。逆に、18時30分よりも前に預かりを終了すると答えた自治体の割合は減少していました(下図を参照)。

 学童保育の待機児童対策が遅れている理由は何なのでしょうか。「学校は文部科学省、学童保育は厚生労働省と管轄が分かれており、学校と学童保育との関係づくりがなかなか進まなかったことに加え、学童保育の指導員不足もハードルとなっています」と、池本さん。

 「自治体としてはまだ『とりあえず小1の壁を解消する』という段階で、面積を増やすために学校の教室の一部を学童保育に転用する自治体も増えています。ただ、子どもの負担を考えると、それが正解なのかどうか。大切なのは、指導員の十分な確保や活動内容の充実によって、『子どもにとって行きたい学童保育を作る』こと。小学生の子どもがいる親の働き方の見直しや、学童保育以外の子どもの居場所を増やすことも重要です。『子どもにとってふさわしい放課後』についてのビジョンを、国または自治体が示して方向付けすることが必要です」