認可保育園などに通う3~5歳児の保育料を無償化する「幼保無償化」が大きな話題となった2019年。待機児童問題への対応も含め、自治体の取り組みはどこまで進んだのでしょうか。2015年から毎年行っている、日経DUALと日本経済新聞社による共同調査「自治体の子育て支援制度に関する調査」を今年も実施。その結果を基に「子育てしながら働きやすい街」をDUAL・新聞独自の指標でランキングしました。

本特集では上位自治体への取材から「子育て政策で結果を出す」ための秘策を紹介。過去5年間の調査で得たデータを基に、今後への課題もあぶり出します。

 2019年に全国162の自治体を対象に調査した総合ランキングで1位となったのは東京都葛飾区。人口46万人、東京都の東の端に位置する下町です。葛飾区は2017年の総合ランキングで25位、2018年は8位と、段階的に順位を上げてきました。葛飾区長の青木克徳さんは「区長に就任して10年たったところですが、特に最近になって取り組んできたというよりは、就任時から子育て政策を重視してきました。保育園を全部回って、現場や街のいろいろな声を聞きながら対策を進めています」と語ります。どんな考えに基づいて子育て政策を実行してきたのか、成果を上げられたのはなぜなのか。詳しく話を聞きました。

中央が葛飾区長の青木克徳さん
中央が葛飾区長の青木克徳さん

日経DUAL編集部(以下、――) 就任当初から子育て政策を重視してきた背景にはどのようなことがあるのでしょう? 例えば今は日本全体が少子高齢化で、「子どもの数を増やしていかないといけない」のはある程度みんなの共通認識だと思います。区長にもそういった問題意識があったということですか?

青木克徳区長(以下、敬称略) 国を維持したり、経済を維持したりという観点から考えると、「人口が減る社会」はつまり「衰退する社会」ですから、確かにそういう問題意識はありますね。葛飾区は今少しずつ人口が増えており、これは日本全国から見たらまれなことです。

 ただ、そういった観点だけではく、もっと単純に区民の声を聞くと「子育ては楽しい」「子育てをしたい」という人がたくさんいるんですよ。

 葛飾区では現実的な区民の声を集めるために、さまざまな調査やアンケートを実施しています。結果を見ると、子どもが欲しい、それもできれば一人じゃなくて二人以上欲しいという意見も多い。まず、そういう声に応えるために子育て政策を重視しています。

 もちろん「これ以上の少子化は望ましくない」といった国レベルの目線も大切です。でも、あまり大局的なところに目が行き過ぎてしまうと、区の現場に目が届かなくなる。すると現実に困っている人がいるのに、問題を見逃してしまう危険性があります。たとえ区全体として人口が増えたとしても、これはあまり良い状況ではないですよね。子どもたちが安心して過ごせる、個々の人が幸せになるのがまず重要なんです。

 区民の声を聞きつつ、現状に沿った政策を柔軟に実行するのが大切です。保育園の数なども、日々の状況を見ながら調整しないといけません。実際に保育園の状況に関しては、「年齢のミスマッチ」や「場所のミスマッチ」が常にあるんです。

―― ミスマッチというのはどういうことですか?