認可保育園などに通う3~5歳児の保育料を無償化する「幼保無償化」が大きな話題となった2019年。待機児童問題への対応も含め、自治体の取り組みはどこまで進んだのでしょうか。2015年から毎年行っている、日経DUALと日本経済新聞社による共同調査「自治体の子育て支援制度に関する調査」を今年も実施。その結果を基に「子育てしながら働きやすい街」をDUAL・新聞独自の指標でランキングしました。

本特集では上位自治体への取材から「子育て政策で結果を出す」ための秘策を紹介。過去5年間の調査で得たデータを基に、今後への課題もあぶり出します。

保育園などのインフラ、補助金やサービスの内容をきめ細かく評価

 毎年公表している「共働き子育てしやすい街ランキング」も今年で5回目を迎えます。この企画が始まった2015年は高まる保育ニーズに自治体の施策が追いつかず、待機児童対策などが話題でした。2019年現在では全体的に子育て政策が前進し、例えばランキング上位の自治体では、2020年までに待機児童ゼロを「十分に達成可能」「ほぼ達成可能」とした回答が多くありました。結果として今年のランキングは接戦で、最終的には待機児童対策などの問題に積極的に取り組みつつ、細やかな施策を独自に、地道に実施してきたところが上位に残ったと言えそうです。

 ランキング結果の発表に入る前に、調査の評価ポイントを簡単にご紹介しておきましょう。一口に「共働き子育てしやすい」と言っても、実際にどんな施策が効果的かについては多様な観点が考えられます。本調査では特に、「共働きをする際に必須となる施設(インフラ)と補助(お金・サービス)」の2点に注目しています。

 もう少し詳しく説明すると、ランキング作成にあたって最も重視したのは「保育園入園を希望する人がどれくらい入れるか(入りやすさ)」といった保育園周りの整備状況です。次いで、「子育て世帯に向けた補助・サービス」「学童保育の整備状況」「保育の質を保つ取り組み」などをそれぞれ評価しています。「共働き家庭にとって暮らしやすい街か」という視点から、以下のような「DUAL評価ポイント14」を作成しました。

<自治体ランキング DUAL評価ポイント14>
1.認可保育園に入りたい人が入れているか
2.認可保育園の保育利用枠の今後の増設状況
3.認可外保育施設などの受け皿がどのくらい用意されているか、利用者への助成はあるか
4.病児保育施設の充実度
5.待機児童ゼロの達成状況
6.幼児教育・保育無償化以上に保育料値下げなどをしているか
7.未就学児がいる世帯へのサービス・現物支給があるか
8.学童保育が充実しているか
9.保育士確保へ自治体独自の取り組みがあるか
10.保育の質担保への取り組みがあるか
11.産後ケアへの取り組みがあるか
12.不妊治療助成を実施しているか
13.児童虐待に対応する支援拠点の整備
14.未就学児の人数

 ランキング集計時には、1から14までの評価ポイントをそれぞれ複数の観点からチェックしました。例えば「1.認可保育園に入りたい人が入れているか」なら、0歳児または1歳児がどのくらい認可保育園に入園できているか、保育園の利用児童数の推移、増枠の状況などを評価しています。

 今回の記事では上記を基に全国139の自治体(詳細は下記カコミ参照)を評価し、点数順にした「総合ランキング(総合編)」を紹介します。今後の記事では総合編で上位の自治体の積極的な取り組みや、いまぶつかっている課題などを紹介していく予定です。

 また、保育に関する制度や待機児童数などの状況は、都道府県ごとに大きく異なります。この違いを勘案して「総合編」のほかに「東京編」と「東京を除く全国編(全国編)」のランキングも作成しました。こちらも上位の自治体の現状や興味深い施策を順次、見ていきます。

【調査について】
・調査名:「自治体の子育て支援制度に関する調査」
・調査対象:首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、中京圏(愛知・岐阜・三重)、関西圏(大阪・兵庫・京都)の主要市区と全国の政令指定都市、道府県庁所在地の162自治体
・回答数:139自治体
・回収率:85.8%

※以下の23自治体は調査に未回答でした。【未回答自治体/昭島市、あきる野市、尼崎市、和泉市、伊丹市、市原市、岡崎市、加古川市、鎌倉市、川口市、川西市、清瀬市、草加市、台東区、茅ヶ崎市、鳥取市、秦野市、東村山市、枚方市、福井市、藤沢市、水戸市、港区(50音順)】