間違った交渉は人間関係を壊してしまう

 「日本では、男女による賃金格差が問題となっていますが、もちろんこの背景には、家事や育児の分担が男女で均等ではなく、女性により負荷がかかっていることはあると思います。ただ、『交渉』では男女間における差が存在し、男性のほうが交渉への心理的ハードルが低いといわれ、それが男女の年収差にも影響している可能性は十分あります」(松浦さん)

 交渉力を磨かなければこの先ずっとその状況が続いてしまうかもしれません。「こんなはずじゃなかったのに」とならないためにも、今、交渉力を磨く必要があるのです。

 気を付けなければならないのは、交渉のやり方です。みらい総合法律事務所の弁護士、谷原誠さんは「間違った交渉は人間関係を破壊する可能性があります」と話します。

 相手からいかにしてYESを引き出すかを考えるのが交渉ではありません。「相手を出し抜いてやろう」「言い負かしてやろう」というような、一方的なWin-Loseを得て禍根を残す交渉ではなく、どちらにとってもプラスの結果を生むWin-Winの交渉が主流となっています。

 「自分が何かをお願いする代わりに、相手のお願いを聞いてあげる、つまりお互いに『貢献し合う』ことで、お互いに納得することができます。必ずしも利害が対立している中で駆け引きをすることだけが交渉ではありません。頼み事をされたときに断る、お願いされたときにお願いし返すことも交渉です」(谷原さん)