コロナ下で働き方や暮らし方が大きく変わりました。それだけでなく、DX、多様化、グローバル化もますます進んでいくでしょう。子どもたちが社会に出る十数年後に、親世代の常識はどこまで通用するでしょうか。親はこうした変化にどう対応すればいいのでしょうか。この特集では「働き方」「キャリア教育」「ジェンダーバイアス」の3つの変化に注目し、「子育ての新常識」を探りました。

親は子どもに「リスクが少ない仕事」を勧めたくなる

 ゲームの実況動画をするユーチューバーやeスポーツのプレーヤーなど、親が子どものころには想像もしなかった仕事が生まれています。新卒で入った会社で定年まで過ごす働き方は変化しつつあり、親が就職したころと職業観は大きく変わりました。途中で職業を変えることも珍しくなくなってきています。

 しかし、心理学者でキャリア形成支援にも関わる神奈川大学人間科学部・大学院人間科学研究科教授の杉山崇さんは「『そんな仕事で食べていけるの? こういう仕事のほうがよいのでは』『あなたには無理だと思うよ』などと親から言われたことのある学生が多い」と言います。

 「親は子どもが挫折したり、苦労したりする姿を見たくないので、『無謀かもしれない』と感じることに対しては、リスクを説明し、安定した仕事に誘導したくなるかもしれません。しかし、子どもが語る夢は、どんなことであっても自分で考えて出した結果です。親が『そんなものは仕事にはならないし、あなたには無理』と否定したら、子どもの可能性をつぶしてしまうかもしれません

イノベーションで新しい仕事が生まれている

 杉山さんが学生のころ、詩人になりたいという知り合いがいたそうです。「でも、『仕事として成立させるのは無理だ』と周りに言われていました。今の時代なら、SNSで世界中の人にリーチできます。チャンスも多く、広告が付けば職業として成立します」。イノベーションによって、新しい仕事が次々に生まれています。「子どもが夢を叶えて幸せをつかむために、親は職業に対してフラットな視点を持ち、自分の職業観を変えていく必要があります

 子どもへの反応も大切です。「子どもの夢は子どものものです。子どもの言うことに耳を傾け、『君はそう考えるんだね。それで、それはどうやったらできそうなの?』と具体的な話を聞いてあげるとよいでしょう」

 杉山さんは、親が子どもの将来の夢を応援するためには、「子どもの勘違い力を伸ばす」「実力を伸ばす」「自分自身でリスク対策ができるようにする」という3つの視点を持つことが大事と言います。次ページから具体的に聞いていきます。