コロナ下で働き方や暮らし方が大きく変わりました。それだけでなく、DX、多様化、グローバル化もますます進んでいくでしょう。子どもたちが社会に出る十数年後に、親世代の常識はどこまで通用するでしょうか。親はこうした変化にどう対応すればいいのでしょうか。この特集では「働き方」「キャリア教育」「ジェンダーバイアス」の3つの変化に注目し、「子育ての新常識」を探りました。

ジョブ型になると、ここまで変わる日本の働き方

 「ジョブ型」雇用を一部で導入していた日立製作所が本格採用に広げ、富士通やKDDIはジョブ型人事制度の導入を発表するなど、ジョブ型に取り組む企業が相次いでいます。リモートワークで働き方が変わり、「メンバーシップ型」では社員を評価するのが難しくなってきたことも背景にあるようです。

 「今、世間で言われているジョブ型は成果主義の言い換えで、欧米のジョブ型とは異なります。もし欧米で行われているようなジョブ型になれば、教育のあり方、企業への就職、社内の人材育成の方法といった『親時代の当たり前』は変わってきます

 そう話すのは、ジョブ型の名付け親で日本型雇用研究の第一人者の濱口桂一郎さんです。

 「これまで日本の学生が行ってきた就活は、実質的には『就職』ではなく『入社』を目指すものでした。会社に入れば自動的に仕事が割り振られてきましたが、ジョブ型ではそうはいきません。ジョブを得るには、『この仕事ができる人いますか?』という求人に、『はい、私ができます』と自分で手を挙げて応募しなければなりません。ですから、未経験の新卒者よりも、専門スキルを持ったスペシャリスト(専門家)が求められるのです。では、新卒者の売りとは何か。経験に代わる専門性や、どの大学の何学部でどういう専門的な勉強をしてきたかが意味を持つようになります。これまでの日本の学歴社会とはまったく違った、欧米式の学歴社会がやってくるのです

 濱口さんは、ジョブ型になると、それ以外にも「若い人のほうが仕事のチャンスがたくさんある」「やりたいことが分からなくても就職はできる」といった、これまでの「当たり前」も変わってくるだろうと言います。次のページから詳しく話を聞きました。