ときと場合によって4つのレンズの変える

敷布団を立てて、なんかやっているなと思ったら、パソコンのまねだった!
敷布団を立てて、なんかやっているなと思ったら、パソコンのまねだった!

 「パパに遊びのレンズがあれば、家の中にあるたわいもないものや日常のささいな行動が突然輝いて見えてきます。例えば布団を干すついでに、おうちやトンネルを作ってみる。以前うちの子どもが、敷布団を立てて、なんかやっているなと思ったら、なんとパソコンのまね。しばらく見ていたら、下から画用紙を引っ張り出してきたので、『え、プリンター内蔵!?』と驚きました(笑)」

 「大人が普段の生活を見せるだけでも遊びの材料になります。あるときは、料理を手伝いたそうにしていたので、さつま揚げを渡したら、夢中になって驚くほど細かくちぎっていました。食べられないことはないから、そのままさせてあげました。時間がなくて泥遊びに行けなくても、これも立派な遊びかなと。子どもがやりたいことは発達欲求の表れなので、状況が許す限り付き合おうとは思っています」

医学や生活のレンズを優先するときにかけたい言葉とは

状況が許さないときは、「気持ちは分かる。でも……」という感情を込めた一言を添えよう
状況が許さないときは、「気持ちは分かる。でも……」という感情を込めた一言を添えよう

 とはいえ、忙しくてそんな余裕のないときもあります。「遊びを専門の仕事にしている私でさえ、ときと場合によっては、生活を優先することは大いにあります」

 そんなときに子どもにかけるといい言葉はあるのでしょうか。例えば、冒頭のソフトクリーム看板をなめるまねをする行為。「医学や生活のレンズを優先して、やめさせるという判断をしたときは、その前に『気持ちは分かる。でも……』という感情を込めた一言を添えてあげてください。その子が大事にしている何かに共感するアクションになります」

リスクとハザードの違いはなにか

 子どもの欲求に沿って遊ばせていると、親がつい言ってしまいがちなのが「危ない!」という言葉。「親は、リスクとハザードの違いを認識しておくといいと思います。例えば、歩き始めの子どもは『おっとっと』と必ず転びます。でも転ぶからと歩くのを制限すると、歩けるようになりません。この場合の転ぶはリスクです。でも、子どもの進む先に、本人が気づいていない画びょうが散らばっている、これはハザードです。そういう『子どもの側に隠された危険』『子どもが自ら選べない危険』をハザードと呼びます」

 「けがをしたらいろいろ大変だから困る、というパパやママの気持ちもすごくよく分かります。ただ、リスクを知らないで大きくなると、年齢が上がれば上がるほどダメージは大きくなります。リスクを体験しないと、危険から自分で自分の身を守れる大人になれません。隠れたハザードを取り除いてあげるのは大人の役目ですが、自らチャレンジしたことに伴うリスクは阻害せず見守る必要があります

 ただ、気をつけたいのは転落の危険です。「落下の事故は重傷になる可能性があります。うちの子もそうでしたが、子どもは高いところに乗りたがり、抱っこして乗せてほしいとねだることがあります。自分で登れない高さは落ちると危険なので『自分で登れるようになってから登りなさい』と伝えていました。プレーパークでも高さのある遊具を作るときは、まず1段目を高くして、大きい子しか登れないように工夫します」