ここまで泥だらけになれるのは子ども時代ならでは
ここまで泥だらけになれるのは子ども時代ならでは

 ところでプレーパークとはなんでしょうか。それぞれのパークによって特徴は異なりますが、ざっくりと説明すると禁止事項だらけの通常の公園遊びとは一線を画するもの。ダイナミックな泥遊びや、廃材を使っての遊び道具作り、たき火など子どもたちが想像力を働かせて自分たちで遊べる場を提供しています。

 全身泥だらけになるなど、初めて来る親はちょっと驚いてしまう遊びも。「でも、それほど汚れたりびしょぬれになったりなんて、大人になったら絶対できませんよ」と嶋村さんは言います。

 「プレーパークでは子どもたちが自分で何かしたいと思ったら、自分で動かなくてはいけません。例えば、たき火をつけるにはマッチを擦らなくてはいけない、水を勢いよく出したいならホースを自分でつぶす。わざと不便にして、足りない環境をあえてつくっています」。プレーパークは現在、不定期開催も含めると国内約400カ所にあるといいます。プレーパークのような遊び場が求められる背景には、子どもを取り巻く環境の変化があります。

生活の場で受ける刺激の種類や数が減っている

 「小学生になって鉛筆を握っても筆圧が足りないとか、体育で跳び箱に両腕をついたら骨折した、などの話を最近耳にします」と嶋村さん。

 「子どもの体が成長するためには、ポジティブな負荷が必要といわれています。でも最近は生活環境が変わり、そもそも生活の場で受ける刺激の種類や数が減っています。お水を出す行為ひとつとっても、センサー式が増えたので、蛇口をひねる回数は激減しています」。そんななか、遊びを通してポジティブな負荷をかけることの重要性はより高まっていると嶋村さんは指摘します。

子どもの遊びには発達欲求が潜んでいる
子どもの遊びには発達欲求が潜んでいる

 「子どもは遊びのなかで、自分の発達に必要な刺激を得ているといわれます。子どもの遊びには発達欲求が潜んでいます。例えばブランコに何十分間も乗り続ける子どもは、揺れるという刺激が発達のなかで必要だということ。大人はもう必要ないからそんなに長くブランコに乗れないわけです。大人は子どもを『どう育てたいか』と考えがちですが、子どもの遊びのなかに、子どもが『どう育ちたいか』が表れてきます」

 「そして自分が『したい』と思ったことを実際に『自分でする』という経験を積み上げて、自分の人生をああしたい、こうしたいと思える大人になるのだと思います」

STEAMだって遊びのなかで自然に触れられる

 「プレイワークの理論において、遊びは人生のSPICEと定義されています。Sは社会性の発達、Pは身体の発達、Iは知性の発達、Cは創造性の発達、Eは情緒の発達です。遊びはこれらの5つすべての発達に関わる大切なものです」

 「最近、STEAM(Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics)教育が大事だと盛んに言われていますが、例えば、泥んこになって土と水で川を作って遊ぶのは立派なエンジニアリングだと思いますし、ドングリを拾って数えだしたらマセマティクスですよね。親はあっさりと『さあ、帰るよー』と言ってしまいがちですが、パパに遊びのレンズがあれば、そこに意味を見い出すこともできます」