中学受験・受検に挑戦する家庭の間で、公立中高一貫校は安い学費で質の高い教育が受けられるとして、不動の人気を誇る存在です。実際のところ、適性検査ではどのような問題が出され、入学後はどのような教育を受けることができるのでしょうか。気になる受検倍率や進学実績、ICT事情は? 私立との違いは? 志望するなら知っておきたい、知られざるデメリットは? 取材や最新データを基に、公立中高一貫校の動向を注視してきた教育ライターの佐藤智さんが解説します。

 高倍率で知られる都立中高一貫校。その適性検査にはどのような問題が出題されるのでしょうか。また、問題に込められた狙いとは? 今回は、南多摩中等教育学校と富士高等学校・付属中学校の2校を例に取り、ご紹介します。

学校の特徴を把握する方法とは?

 中学校受験・受検をしようと考えた場合に、必ずというほど「学校をどう選べばよいか」という壁にぶつかります。子どもが「この学校に行きたい!」と強い思いを持っていれば、保護者はそれを後押しするだけでオーケーですが、小学生の時点でそこまで志望が固まっている子はごく一握りです。

 中学校を検討する際に大事にしていたいのは、子どもの個性と学校の特徴が合っているかという点です。子どもの個性を一番分かっているのは保護者です。「これができない」「苦手なのはこんなこと」とマイナスの側面ばかりに目を向けるのではなく、得意なことや強みをすくいあげられるとよいでしょう。その上で、学校がどのような特徴を持っているかを見極めていきます。

 学校を選択する際に重要なのは、その学校が生徒に6年間でどういった資質・能力を付けようと考えていて、そのためにどのような教育計画を立てているかということ。実際に学校に見学に行ったり、パンフレットを確認したりすることで垣間見ることができます。

 コロナ下で学校見学することも難しい場合には、ホームページなど学校が発信している情報をきちんと受け取ってください。ぜひ確認したいポイントとしては、文科省の拠点事業や自治体の指定事業に採択されているかです。こうした指定を受けることで、学校の教育活動に加速度がつきます

 例えば、文部科学省の「WWL(ワールド・ワイド・ラーニング)コンソーシアム構築支援事業」指定されると年900万円程度が学校に振り分けられます。この事業は、「Society5・0(政府が提唱する、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の未来社会のコンセプト)をリードし、SDGsの達成を牽引するイノベーティブなグローバル人材を育成すること」を狙いとしていることから、採択されることで、グローバルな課題を探究する機会などが充実することが期待できるのです。つまり、その分生徒たちの学びの機会や環境が豊かになります。自由に予算を使いにくい公立学校においては、こうした予算を獲得できることには大きな意味があります。学校の特徴を把握するための、とっかかりの1つとしては有効な手立てだといえます。

 適性検査の内容も、育てたい生徒像を念頭に作られる傾向があります。