親が何度も言わなくても、自分で時間割を確認して学校の準備をする。テストが戻ってきたら、見直して間違えたところを復習するなどして、勉強のサイクルを自分で回している。そんな、「自分で考えてやることを決め、行動していける自走力」をわが子に求める親が増えています。そこには、仕事に家事に忙しい共働き家庭の事情があるとともに、社会に出たときに「自走力」こそが幸せをつかむカギになることを実感している、働く親ならではの気づきもあるようです。そこで、保育園~高学年の子どもの自走力をどのように育てていけばよいか、教育の専門家や、自走力で人生を切り開いてきた当事者、自走力を意識した子育てを実践中の働く親に聞いていきます。

時間もタスクも「見える化」させる

 前編記事では、公立小学校で23年間教えた経験のある親野智可等さんに、子どもに必要な2種類の自走力の違いや、勉強を主体的にするようになる「合理的な工夫」を聞きました。後編の本記事では、時間とタスクの管理ができるようになる「合理的工夫」のほか、子どもが求めることを親が代わりにやってあげても過保護にはならず、かえって自走度を⾼める理由などについて聞いていきます。

【この特集で考える「自走力」は次の2種類】

1 自分で考えてやることを決めて主体的に行動できる力
これからの時代に一生必要になる、真の自走力

2 嫌なことでも自分を納得させ、物事を進めていける力
暮らしをスムーズに回すために必要な自走力

 上記の2番目の自走力で一番大事なのは、登校時間を守ったり、宿題を決めた時間に開始するなど、ルーティーンの時間管理ができるようになることだと親野さんは話します。そのためには、時間を「⾒える化」してあげることが必要で、この「⾒える化」は1⽇の中ですべきタスク管理をできるようになってほしい場合でも有効だそう。

【時間管理や、日々の「すべきこと」を自分でさせるための工夫】
ポイント:時間、タスクを見える化する
(1)「模擬時計」をアナログ時計の周りの空いているスペースに掲示する
(2)ホワイトボードのスケジュール表を子どもと一緒に作成する
(3)タスク管理にはお支度ボードを活用する
(4)時間やタスク管理のツールが使えるように子どもをサポートする

 「子どもは経験が少ないので、大人のように頭の中で時間配分をすることができません。午後3時に帰宅したとして、翌日学校に行くまでの時間の長さも漠然としていて、時間は無限で、宿題をする時間はいくらでもあると思っています。『後でやる』と言うときも本気でそう思っているのです。しかし、実際は時間には限りがあります。『時間というものはどこかで区切って考える必要がある』と伝えるための工夫が上記の(1)と(2)です