親が何度も言わなくても、自分で時間割を確認して学校の準備をする。テストが戻ってきたら、見直して間違えたところを復習するなどして、勉強のサイクルを自分で回している。そんな、「自分で考えてやることを決め、行動していける自走力」をわが子に求める親が増えています。そこには、仕事に家事に忙しい共働き家庭の事情があるとともに、社会に出たときに「自走力」こそが幸せをつかむカギになることを実感している、働く親ならではの気づきもあるようです。そこで、保育園~高学年の子どもの自走力をどのように育てていけばよいか、教育の専門家や、自走力で人生を切り開いてきた当事者、自走力を意識した子育てを実践中の働く親に聞いていきます。

これからの時代に不可欠な「自走力」には2種類

 「自分で考えてやることを決めて主体的に行動したり、嫌なことでも自分を納得させ物事を進めていったりする自走力を育てるにはどうしたらよいのでしょうか」。公立小学校で23年間教えた経験のある親野智可等さんにこう聞いたところ、意外な答えが返ってきました。

 「その2つはかなり違う力です。区別して考える必要があります

【この特集で考える「自走力」は次の2種類】

1 自分で考えてやることを決めて主体的に行動できる力
これからの時代に一生必要になる、真の自走力

2 嫌なことでも自分を納得させ、物事を進めていける力
暮らしをスムーズに回すために必要な自走力

 「どちらも『自走力』と思うかもしれませんが、本当の意味での自走力は1番目です。こちらは親御さんを含めこれからの時代を生きていくのに必要になる力。仕事でもプライベートでも人生を豊かなものにするために、ぜひ育ててあげてほしいと思います。

 一方、2番目は、親がやらせたいことを進んで行う子どものことを指していると思いませんか。朝は自分で起きる、宿題をどんどんやる、自分で片付けをする……。こういった力がある子は、育てやすいかもしれません。しかしそれをあまり優先しないほうがいいというのが私の考えです。求めすぎると、わが子を育てにくいと感じて親子関係も悪くなるからです」

 とはいえ、仕事に育児にと忙しい働く親としては、子どもに2番目の自走力を求めてしまうのも現実です。子どもができないことを親がしてあげることで、過保護になり、子どもがますます自立しなくなるのではという心配もあります。

 多くの親子の悩みに接している親野さんは「働く親の皆さんが『子どもが自分でやってくれたら楽なのに』と2番目の自走力を求める気持ちも分かります」と話します。一方で、子どもができないことをしてあげることが子どもの自立を妨げることはなく、むしろ、子どもの自立度を高めたという研究もあると話します。これについては、後編で詳しく解説します。まずは、区別して考えるべきだという2種類の「自走力」それぞれの特徴と育み方を聞いていきましょう。

【2つの自走力を育む方法は?】

1 「自分で考えてやることを決めて主体的に行動できる力」を育てるポイント
・○○○○をさせたり、必要な物、関係する○や○○を与えたりして、子どもが熱中することを全面的に応援する

2 「嫌なことでも自分を納得させ、物事を進めていける力」を育てるポイント
・子ども自身が自分から動くように「合理的工夫」をする
・○○○○を下げて、取りかかりやすくする
・○○○○○○を見える化する←こちらは後編で解説