家事・育児の分担、子どもへの接し方、教育方針や仕事観……パートナーの態度や言葉に対し、違和感を持ったことはないでしょうか。話し合いで解消すればいいけれど、時として互いの価値観がぶつかり合い、深刻な夫婦喧嘩に発展してしまうこともあります。だからといって違和感をそのままにしていると、気付かぬうちに溝が深まり、修復不可能な状態になってしまうかもしれません。そもそも人の価値観はどう形成されるのか、価値観の違うパートナーとわかり合うことはできないのか。違和感が生じる背景や、解消法を探っていきます。

価値観形成には親の存在が大きく影響

 結婚生活の中で生じがちなパートナーへの違和感。しかし、多くの夫婦の場合、当初は相手の価値観にも共感して結婚に至ったケースは少なくありません。

 ではどうして、そんな状態から違和感を持つようになってしまうのでしょうか。今回の記事ではパートナーに違和感があり、夫婦の関係性に悩んでいる人が、そうした違和感を解消し、この先、良好な関係を保っていくために、今すぐにできる方法を提案します。

 そもそも、夫婦それぞれの価値観はどのように形成されていくのでしょう。家族心理学者で、立命館大学総合心理学部教授の宇都宮博さんは、「子どもが家庭で育つ前提で考えた場合、まずその人の価値観の形成に影響するのはそこにいる大人、つまり多くの場合は親である」と説明します。「多くの人にとって最初の社会は家庭です。子どもは家庭という社会にしっかりと適応して生きていくことをまず迫られていて、親との関わりの中で『どうすることが望ましいのか』を身に付けていくのです」。

 それは、言い換えると親の権威や考えに従うということ。このようにして親を理想に置いた価値観が形成されていくわけですが、多くの人は、ある時期にこの価値観に大きな変化が生じ始めると宇都宮さんは言います。それが思春期です。

 「思春期には親以外に尊敬でき、自分の生き方のモデルにしたい人が現れ、その人の考え方などに影響を受けるようになります。それは学校の先生であったり、部活の先輩や同級生だったり、アイドルやスポーツ選手、人によっては音楽作品やアニメのキャラクターなど、生身の人間以外からかもしれません。

 つまり、親が絶対的な存在ではなくなる『脱理想化』が起こり、価値観が社会性を帯びた広がりを持っていくのです。それは親からの受け売りの価値観ではなく、自分で選んだ価値観が出現してくるということもできると思います」

 そのようなプロセスを経て、人は自分自身の価値観が形成されていきます。その形は、歩んできた道が違う分だけみな違いますし、それは夫婦であっても大なり小なり差異があることは想像できます。

価値観のずれから夫婦間の温度差につながることも
価値観のずれから夫婦間の温度差につながることも

 つまり、人と人との価値観にずれがあるのは、ある意味、当たり前なのですが、夫婦関係の場合、足並みをそろえなければならない場面も多く、その積み重ねの中で違和感を覚え、関係が悪化する原因になってしまうこともある、と宇都宮さんは指摘します。また、共働きで子育てしている夫婦の場合は、特に違和感が生じやすい状況にあると言えます。その理由とともに、夫婦関係の悪化を防いだり、悪化した夫婦関係を修復したりする方法について、詳しく見ていきましょう。

この記事で読めること
・共働き夫婦の価値観のずれは、結婚後、毎日のように生じる○○○○の場面で顕在化しやすい

・互いの誕生日や結婚記念日などの「節目」にやるべきこと

・夫婦で価値観のずれを認め、擦り合わせしようとする行動が子どもの安心につながる