子育てにおいて、「もっと知識を付けさせなければいけない」「言って聞かせないといけない」など、知らず知らずのうちにインプット重視の考え方になっていませんか? 新しい知識をインプットすることは大事ですが、それ以上に大事なのがアウトプット。「アウトプットが7割」を心掛けることで、子どもが頭の中を整理しやすくなったり、自分の本当の気持ちが見えてきたり、勉強面でも理解がより深まり知識が定着しやすくなったりするため、インプットの効率も飛躍的に高まります。では、何をどうやってアウトプットさせれば、子どもを伸ばすことができるのでしょうか。具体的な方法を紹介します。

応募動機は、「スピーチが苦手だったから」

 ビル・ゲイツなど世界中の著名人によるさまざまなプレゼンテーションを配信している非営利団体「TED」。TEDからライセンスを受け、世界各地でTEDxというコミュニティが発足し、日本でも「TEDx Tokyo」などのカンファレンスが開催され話題となっています。

 2021年9月には「TEDx Ogikubo」が開催され、都内から2人の中学生が登壇し英語でスピーチをしました。「TEDx Ogikubo」をオーガナイズしたピグマリオン恵美子さんは、登壇者の選考基準についてこう語ります。

 「送られてきたプレゼン動画を元に選考しました。基準は、世界をよくするアイデアがあるかどうか。今回登壇した2人の中学生に共通していたのは、先生や親に勧められて応募してきたのではなく自分の意思で挑戦したこと。本人の主体的な姿勢が、志望動機やスピーチ動画を通してありのままに伝わってきました

「TEDx Ogikubo」に登壇した中学生の一人、渋谷教育学園渋谷中学校の清水麻莉花(14歳)さん。緊急事態宣言下のため無観客ではあったが、8分間、堂々と英語で『持続可能な未来』をテーマにスピーチを披露した
「TEDx Ogikubo」に登壇した中学生の一人、渋谷教育学園渋谷中学校の清水麻莉花(14歳)さん。緊急事態宣言下のため無観客ではあったが、8分間、堂々と英語で『持続可能な未来』をテーマにスピーチを披露した

 渋谷教育学園渋谷中学校の清水麻莉花(14歳)さんもその一人です。清水さんは「持続可能な未来」をテーマに、SDGsについて自分の意見や世界に広めたいアイデアをスピーチしました。清水さんは小学1年生まで海外のインターナショナルスクールで学んだ帰国子女で、今回のスピーチも英語で行いました。海外育ちだから苦もなく英語スピーチをこなせたのかと思いきや、「むしろその逆、ずっとパブリックスピーキングには苦手意識を持っていました」と話します。

 「私はもともと、両親からも石橋をたたいて渡るような性格だと言われてきました。だからこそ、今回の『TEDx Ogikubo』に出演し、そうした苦手意識を克服しようと思いました。今も完全に克服できたわけではないですが、どうすれば本番にすべての力を出しきれるかは少し分かったような気がします。何分のプレゼン準備にどのくらいの時間がかかるのか、そのためには、いつからどんな準備を始めたらいいのかなどがつかめるようになったからです。今後は、人生経験を積むことで、今よりずっといいスピーチができるようになると思っています。ぜひ、また挑戦したいです」

 苦手なスピーチに挑戦することを、更なる高みを目指すための「成長のチャンス」と捉えている清水さん。TED登壇のためにどんな準備や練習を行い、実際の視聴者たちの反響から何を学んだのでしょうか。清水麻莉花さんと母親の麻由子さんに詳しく話を聞きました。

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●小学6年生まで通っていたインターナショナルスクールで、とんちんかんな質問にも「質問したことが素晴らしい、ありがとう」と言われ続け、アウトプットのベースとなる「自己肯定感」や「リスクテイクの姿勢」が育まれた
●スピーチの練習ではZoomや動画の録画をフル活用!
●アウトプットしたからこそ気づけた「伝える難しさ」と「多様な視点を入れることの重要性」

編集部(以下、--) そもそも、TEDx Ogikuboに登壇したきっかけは何だったのですか?

清水麻莉花さん(以下、麻莉花さん) 米国の「TED Talks」が昔から好きでよく見ていました。ある日、「TEDx Ogikubo」が開催されることを母から聞き、これを通してパブリックスピーキングへの苦手意識を克服したいと思い「やってみたい」と言ったのです。

-- 大舞台にもかかわらず、動画で見た麻莉花さんのプレゼンテーションは本当に堂々としていました。英語であること、8分以上に及ぶスピーチなど、TEDのハードルの高さにひるむことなく14歳で挑戦できたのはどうしてだと思いますか?