「管理職になりたいか」という問いに対し、女性の半数以上が「なりたくない」と回答しています。一方で政府は2020年代に指導的地位に女性が占める割合を30%にするという目標を立てています。帝国データバンク調査によると、現在の女性管理職割合の平均はたったの8.9%です。小さい子どもを持ち、仕事と家庭の両立をしているママでも、管理職への打診を安心して受けられるために必要な「武器」を準備する方法をお伝えします。

 12月に発行されたばかりの『なぜ自信がない人ほど、いいリーダーになれるのか』(小早川優子著、日経BP)。この本のエッセンスを紹介する本特集の6本目です。昨今注目されているリーダーシップの中でも特に自信のない人との親和性が高い、「オーセンティック・リーダーシップ」について、著者でワークシフト研究所代表取締役社長の小早川さんに詳しく解説してもらいます。

オーセンティック・リーダーシップ

 前回記事ではさまざまなリーダーシップ・スタイルを紹介しましたが、「オーセンティック・リーダーシップ」も、リーダーシップの新しい概念です。「オーセンティック」とは「本物の」という意味です。自分の倫理観や価値観を核にし、ときには自分の弱みまで含めた本音をもさらけ出す勇気を持ちながらリーダーシップを取っていくスタイルです。

 このリーダーシップ・スタイルで重要なのは、「個人の目標」と「組織の目標」を融合させること。リーダー自身やメンバーが、本音レベルで達成したいと考える個人の目標と組織の目標を一致させるということです。

 これまでの組織では、リーダー個人の思いや考えとは無関係に「組織の目標」が優先されていたともいえるでしょう。今は「個人のやりがい・キャリア観・目標・成長を考慮し、個人の目標と組織で達成すべき目標を融合させて仕事の意義を深める時代」が到来しています。チームメンバー一人ひとりが、個人の目標と組織の目標を擦り合わせることができれば、いいリーダーとしての条件をクリアできるということです(*1)。

 こうした新しいリーダーシップに対して、従来型のリーダーシップにはもはや効果がないのかというと、そういうわけではありません。今後も「私について来い」という強いリーダーシップがなくなることはないでしょう。トラブルや大きな災害が起きたとき、メンバーのスキルや意欲が低いときなどは、従来型の強いリーダーシップが有効なケースも出てきます。

 ただ、日常的に組織を運営する上で、それが「古くなっている」という見方は正しいでしょう。モノづくり中心の社会からサービス業中心の社会に世界が変化していることに伴って、仕事の場において、一人ひとりの「働く意欲」の重要性がますます高まっていきます。

 また、複雑性や専門性が高まる現在では、リーダーがすべての情報を掌握し、コントロールすることは不可能です。メンバーのほうが多くの情報を持つ分野はたくさんあるでしょう。ですから、リーダー一人の意欲や能力よりも、一緒に働くメンバー一人ひとりのモチベーションや成長意欲を高めるほうが企業の生産性に貢献できるのです。

 特に、2020年から続く感染症の世界的大流行が引き起こしたさまざまな試練に対し、レジリエンス(再起力、回復力)を発揮できるチームを築くことに最も成功しているのは、感情共有型のリーダーであることが最新の研究で分かっています。

 リーダーシップの形は一つではなく、このようにさまざまです。自分と、チームにとって強みは何かということも考えながら、状況に合わせて使い分けていきましょう。