「管理職になりたいか」という問いに対し、女性の半数以上が「なりたくない」と回答しています。一方で政府は2020年代に指導的地位に女性が占める割合を30%にするという目標を立てています。帝国データバンク調査によると、現在の女性管理職割合の平均はたったの8.9%です。小さい子どもを持ち、仕事と家庭の両立をしているママでも、管理職への打診を安心して受けられるために必要な「武器」を準備する方法をお伝えします。

 特集1本目「なぜ自信がない人ほど、いいリーダーになれるのか」、2本目「自信のない女性が管理職になることの大いなる意義」に引き続き、ワークシフト研究所・代表取締役社長の小早川優子さんに聞きました。

リーダー昇格の打診をする上司の立場になってみる

 女性の中には、社内で昇進を打診されたとき「自信がない」と断ったり、快諾をちゅうちょしたり、悩んだりする人が少なくありません。昇進を打診されたこと自体「評価されたこと」ですから、喜んだり、少し驚いたりもするでしょう。ただ、「自分に務まるだろうか」と不安があると、思考が停止してしまい、打診してくれた人の立場で考える余裕を持てないこともあるかもしれません。

 しかし、このときこそ、会社の立場に立って考える視点が大事です。

 あなたに昇進を打診した上司は、提示した職位をあなたが全うできる能力を認めているでしょうし、あなたならチャレンジしてくれると信じているかもしれません。もしかしたら、上司はあなたの潜在能力を買っていて、周りからの反対や心配の声がある中でもリスクを取って、あなたを推薦してくれているのかもしれません。

 まだ多くの企業では、子育て中の女性をリーダーに任命することに反対する声が少なからずあると思います。そんな中、育児との両立をする社員をリーダーに推すのは、会社にとっても大きな決断といえるでしょう。残業せずに働くリーダーが少数派の組織では、上司だけでなく他の社員も、育児と仕事を両立しているリーダーがどのように業務を回すかを想像できず、不安になるかもしれません。

 育児中のリーダーが働けない時間帯(夜など)に突然の業務が発生したときに、リーダー不在を部下の育成チャンスとして捉える風土や慣習があれば問題はありません。しかし、チームメンバーがさまざまな都合により稼働できないという場面を、まだあまり経験していない企業では、社員の意識を変えたりや新たな知見を獲得したり、経験値を浸透させたりするという「これまでなかった追加のマネジメント」が必要になります。そうしたことも考慮したうえで、上司はあなたに「任せてみよう」と思ったのです。

 また、打診する管理職(多くは男性)の心理はどのようなものでしょう。男性の部下に断られるよりも、女性部下に断られるほうがきついのではないでしょうか。ある男性経営者から聞いた話では、女性社員に打診するとき、「男性上司は、そのようなそぶりをみじんも見せていなくても、女性が考える1000倍ぐらいの勇気を振り絞って声を掛けている」そうです。女性の側には「打診を断る」のはそこまで重いことという自覚がないかもしれませんが、それは後輩への影響も含め、本人が思うよりネガティブな影響力を持っています。