「感情的にストレスがたまる家事」を夫に理解してもらう

治部:夫婦で目線を合わせ、話し合いをして、家事を取捨選択することで、妻側のストレスはある程度解消されるかもしれません。でも実は、「感情的にストレスがたまる家事」を夫に理解してもらうことも、分担と同じくらい大切な気がしています。

 SNSなどで、女性が男性に対して「もっと家事をして」と激しく追求し、一方で男性が女性に「それなら俺と同じくらい稼いでみろ」と反論しているのをよく見かけますが、実はこの対立は不毛だと思うんですよ。どちらも、理解し合うことを着地点にしていないのですね。仕事で忙しくて物理的に時間が取れないこともあるし、一度家庭に入った妻がすぐに夫と同額を稼ぐのは実際のところ難しいですから。

梅田:「自分が一番大変」という思いが夫婦間の断絶を生んでいるような気がします。日本人は真面目ですから、「自分は一生懸命やっている。だから自分が一番大変に違いない」という前提が生まれやすいのでしょうね。そうすると、相手の立場を思いやる余裕がないまま、ストレスによって心がすり減っていく。

治部:共働きでも、夫婦で就業形態が違う場合もありますからね。夫は夫で疲れていて、それでも頑張って働いて帰ってきたときに、部屋が汚かったら愚痴の一つも言いたくなるかもしれません。そのときに夫が、「妻も一日大変だったんだ」と思えれば、ケンカに発展しづらくなりますし、家事や育児を二人で分担しながら頑張ろうという気持ちになるかもしれませんよね。

 書籍のなかで「レジ2回並び」という家事が紹介されていましたが、あれも家族を思ってのこと。いちいち献立の希望を聞かなくてもいいのに、という話ではなく、「家族が喜ぶものを作ってあげたい」という妻の気持ちを夫に理解してほしいということですよね。夫が会議中でメッセージを見られないこともありますから、理解したところで毎回すぐに返信が届くとは限りませんが、まずはお互いの状況に思いをはせられるようになりたいですね。

「レジ2回ならび」(同131ページ/(c)ヤマサキミノリ)
「レジ2回ならび」(同131ページ/(c)ヤマサキミノリ)

梅田:夫婦で目線が合っていれば、無理なものは無理だと割り切って家事を取捨選択することもできますし、「自分ではやらない代わりに、他の人や機械に任せる」という選択肢を抵抗なくチョイスできます。そうやって家族全員が納得できる最適解を見いだし、家庭を運営していけば、きっとその家庭で育つ子どもの感覚も変わっていく

 次の世代には新しい「当たり前」ができ、さらに進化した「しない上手」「任せる上手」な子どもが現れると思いますよ。

取材・文/華井由利奈 写真/稲垣純也 構成/日経DUAL編集部



治部れんげ
ジャーナリスト
治部れんげ 一橋大学法学部卒業後、日経BP入社。2006~07年ミシガン大学フルブライト客員研究員としてアメリカの共働き子育て先行事例を調査し、14年からフリーに。著書『稼ぐ妻・育てる夫一夫婦の戦略的役割交換』(勁草書房)、『ふたりの子育てルール』(PHP研究所)。日本政府主催の『国際女性会議WAW!』アドバイザーメンバー(2015年および2016年)、東京都男女平等参画審議会委員(現職)、一般財団法人女性労働協会評議員(現職)などを務める。2児の母。


梅田悟司
インクルージョン・ジャパン取締役
梅田悟司 コピーライター。横浜市立大学客員研究員、多摩美術大学非常勤講師。上智大学大学院理工学研究科修了後、電通入社。4カ月半の育休を取得する。直近の仕事に、ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、リクルート「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングなどがある。著書『「言葉にできる」は武器になる。』(日本経済新聞出版社)、『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)ほか。1児の父。