夫婦の相互理解の次に、家事の力の入れ具合を話し合う

梅田:「マーケティングの現場に出向いていく」という気持ちで育休を取ると、復帰後の仕事のやり方が大きく変わると思います。とはいえ、育休に入ってすぐに何かを学ぼうと腕をまくるのではなく、まずは育児や家事に没頭する。育児中はいちいちメモを取っている時間もありませんからね。学びを得るのは復帰後。「没頭」からの「振り返り」という流れが大切です。僕自身、家事と育児に翻弄される育休によって、生活における解像度が一気に高まり、振り返りによってマーケターとしてのスキルが向上したと感じているんですよ。

 実際のところ、家庭や会社の事情もありますし、すべての男性が家事育児にコミットするには時間が掛かりますよね。そのために一気に家事育児を経験する育休は効果的だと感じます。

治部:実は私自身、わが身を振り返らずに働いた「猛烈サラリーマン時代」がありまして……。当時はなかなか子どもの相手ができなかったので、世の男性たちの切なさもよく分かります。「今日は帰りが遅いけれど、お父さん・お母さんは今会社で頑張っているんだよ」と子どもに伝えることは大事だと思います。

梅田:家庭内で理解を深めることが大事ですよね。冒頭で、妻に「こんな遅くまで何の仕事してたの?」と言われた話をしましたが、実はあの言葉、夫が妻に言う「今日、一日家で何してたの?」に近いものがあるんですよ。本当は自分の仕事を早く終わらせて帰りたいのに、上司と取引先の意見をまとめながらプレゼン資料をつくるうちに一日が終わり、ストレスだけが残る。そんな日もありますよね。

 家には名もなき家事を頑張っている人がいる。会社には名もなき仕事を頑張っている人がいる。想像力を働かせて互いに敬意を持つことで、夫婦間の溝は少しずつ埋まっていくはずです。そうして少しずつ理解し合えたら、何に力を入れ、その分どこで力を抜くのか、話し合えるようになるのではないでしょうか

 後編では、具体的に家事の取捨選択の考え方について梅田さんと治部さんがお伝えします。

取材・文/華井由利奈 写真/稲垣純也 構成/日経DUAL編集部



治部れんげ
ジャーナリスト
治部れんげ 一橋大学法学部卒業後、日経BP入社。2006~07年ミシガン大学フルブライト客員研究員としてアメリカの共働き子育て先行事例を調査し、14年からフリーに。著書『稼ぐ妻・育てる夫一夫婦の戦略的役割交換』(勁草書房)、『ふたりの子育てルール』(PHP研究所)。日本政府主催の『国際女性会議WAW!』アドバイザーメンバー(2015年および2016年)、東京都男女平等参画審議会委員(現職)、一般財団法人女性労働協会評議員(現職)などを務める。2児の母。


梅田悟司
インクルージョン・ジャパン取締役
梅田悟司 コピーライター。横浜市立大学客員研究員、多摩美術大学非常勤講師。上智大学大学院理工学研究科修了後、電通入社。4カ月半の育休を取得する。直近の仕事に、ジョージア「世界は誰かの仕事でできている。」、リクルート「バイトするなら、タウンワーク。」のコピーライティングなどがある。著書『「言葉にできる」は武器になる。』(日本経済新聞出版社)、『やってもやっても終わらない名もなき家事に名前をつけたらその多さに驚いた。』(サンマーク出版)ほか。1児の父。