「子どもが一人前になるまで、無事に育て上げたい」というのは、すべての親が共通して持つ切実な願い。「このまま頑張って働き続ければ、何とかなるはず」と思っている人も多いでしょう。ただ、忘れてはならないのは、夫婦のどちらかが病気やケガなどで休職を余儀なくされるなど、万が一の事態も起こり得ること。家計が2本柱から1本柱になったら、先の見通しはたちまちぐらつく可能性があるほど、家計の安定とはもろいものです。

そこで今のうちに、考えられるリスクを総点検しませんか? 意外と知られていない公的保障や職場の制度の確認ポイント、「がん」「事故・災害」「介護」「うつ」などへの備え方をご紹介します。

近くで暮らす母の骨折。施設探しと仕事をどう両立する?

 前回の記事では、親が要介護の状態になったときに備えて、今から知っておくべき介護の基本と心構えについてお伝えしました。では、仕事と介護を両立することになったら、介護保険サービスなどはどのように活用すればいいのでしょうか。厚生労働省が発行する小冊子「仕事と介護 両立のポイント あなたが介護離職しないために(概要版)」には、「仕事と介護を両立できる」ことを前提とした、両立のためのケーススタディーが掲載されています。

 その中から、親が倒れて入院中から施設を探したという、正社員の永田さん(仮名)のケースを紹介します。

(永田さんの場合)

 骨折をきっかけに、母が要介護5に認定されました。寝たきりの状態となったので主治医に退院日を確認し、在宅では正社員として働く仕事との両立が不可能だと判断し、施設を探すことにしました。その後は、入院中の面会や世話、施設を決めるための手続きなどのため介護休業法に基づく「介護休業」を2カ月取得。結果として、自宅から通いやすい場所に介護保険の指定を受けた介護付き有料老人ホームが見つかり、24時間体制での介護が受けられるようになりました。

 介護休業に入る前には、職場で仕事の引き継ぎ等をしっかりと行い、復帰前には、職場の上長と面談。復帰に向けて不安に感じていることなどを伝えるようにしました。それにより職場の理解も得られ、現在はフレックスタイム制度を活用しながら、週に1~2回、通勤途中に母のいる施設に立ち寄るなどして、介護と仕事を両立しています。


出典:厚生労働省「仕事と介護 両立のポイント あなたが介護離職しないために(概要版)」(https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/29_gaiyoban_all.pdf)を基に日経DUALが編集

 永田さんの母親が入った「介護付き有料老人ホーム」は、都道府県の指定(認可)を受けた民間施設です。介護保険の給付対象ではありますが掛かる費用はさまざま。入居一時金がなく月額費用のみを支払うところもあれば、入居一時金として数億円かかる施設もあります。

 永田さんがうまく両立できているポイントは、必要に応じて育児・介護休業法に定められている「介護休暇」や「介護休業」といった制度を上手に活用してやりくりしていることです。