「子どもが一人前になるまで、無事に育て上げたい」というのは、すべての親が共通して持つ切実な願い。「このまま頑張って働き続ければ、何とかなるはず」と思っている人も多いでしょう。ただ、忘れてはならないのは、夫婦のどちらかが病気やケガなどで休職を余儀なくされるなど、万が一の事態も起こり得ること。家計が2本柱から1本柱になったら、先の見通しはたちまちぐらつく可能性があるほど、家計の安定とはもろいものです。

そこで今のうちに、考えられるリスクを総点検しませんか? 意外と知られていない公的保障や職場の制度の確認ポイント、「がん」「事故・災害」「介護」「うつ」などへの備え方をご紹介します。

がんになっても仕事は辞めないほうがいい

 日本人の死因の第1位はがん。国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」によると、日本人の2人に1人(男性62%、女性47%)が生涯の中でがんに罹患し、男性の4人に1人(25%)、女性の7人に1人(15%)ががんによって死亡することが分かっています。

 もしも、自分ががんにかかっていると分かったらどんなことを思うでしょうか? 恐怖や悲しみ、治療の不安などに加え、子どもを持つ親としては「家族の生活費や子どもの教育費をこれからどうしたらいいの?」などと、お金の不安も頭をもたげてくるかもしれません。

 がんになっても働き続けることは可能なのでしょうか? ファイナンシャルプランナーの横川由理さんは言います。

 「がんであることが分かり、国立がん研究センターを訪れたある人がまず言われたのが、『仕事は辞めないでください』という言葉だったそうです。国立がん研究センターのような、日本のがん治療を牽引する中核施設が、がん治療と仕事の両立を推奨しています。がんになると治療にお金がかかるという理由ももちろんですが、仕事を辞めてしまうと病気のことばかり考えてしまい治療にも影響するためです」

 がんは⽣死を左右する病気なので⼀概には⾔えませんが、最近では、「仕事を辞めて治療に専念する」という以外にも、働き続けながら治療をするという選択肢が生まれつつあるようです。私たちがもし、そうした選択を迫られたときに知っておくべき、働く上でのハードルとはどのようなものでしょうか?

 次のページからは、横川さんと、「がんと就労」研究の第一人者である順天堂大学公衆衛生学講座准教授の遠藤源樹さんに、がん治療で負担することになる治療費や、実際にがんになった人の復職までの期間、今から備えられる保険などについてお聞きしました。がんになったときのために今から知っておきたいこと、起こすべき行動などを考えていきます。

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