「自分の親」の子育て方針は、自分自身の子育てにも知らず知らずのうちに影響を与えているもの。生活面や勉強面、性教育などにおいて「自分がどう育てられたか」を振り返り、「まねしたい点」や「反面教師にしたい点」、「子世代に受け継ぎたい点」や「時代に合わせてアップデートしたい点」をフラットな視点で冷静に分析してみませんか。子育てが楽になるだけでなく、わが子の「生きる力」を伸ばすことにもつながるはずです。

「自分の親」の子育て まねしたい点 反面教師にしたい点

「人の手を煩わせてはいけない」の呪縛取り除けば親は楽に

 子育てをする段階になって、自分が子どものころに親から受けてきた記憶がよみがえることもあるでしょう。その記憶の中にはもしかすると、親から理不尽な仕打ちを受けた悲しみや不安、自信や自己肯定感を下げるような親の言動に苦しめられたといったような負の記憶もあるかもしれません。そうした負の記憶のせいで、「自分はちゃんと子育てができるのだろうか」と不安を覚えている人もいるでしょう。

 「子を育てるのは親だけではありません。いろいろなコミュニティ、学校なども、子の人格を形成する上で大きな役割を担っています」。子どもの養育環境の改善に取り組み、「教育虐待」という言葉が広まるきっかけをつくったことでも知られる臨床心理士の武田信子さんはこのように話します。

 保育園や幼稚園に入園するのに伴って、子どもが影響を受ける対象の範囲がぐっと広がります。親からだけでなく親戚、保育園や学校、習い事の友だちなど、さまざまな人たちとの関係性の中で物事の捉え方や性格、生き方を確立していきます。

 「子どもは自分自身と接点のある、あらゆる人の影響を受けて育ちます。家庭の外に出て行くと、自分を育てる人が、家族から社会へと広がっていくわけですね。これは、将来につながる人間性の基盤を作る意味でも、あるべき子育ての姿だといえます」

 自分の子育てに自信がなかったり、自分自身がされてきたような不適切な子育てを子どもにもしてしまうのではないかと恐れたりすることがあったとしても、子どもは周囲の影響を受けながら育つから、神経質になるよりもみんなと一緒に育てる時間を増やしてしまおうというのです。

 武田さんは「親自身が、子どもは社会で育てるという意識を持つことがとても大事」と強調します。例として、カナダのキャッスルガーを訪れたときに見た印象的な光景を話してくれました。

 「赤ちゃんが生まれたばかりの家庭に、近所の人が交代で毎日の食事をお鍋ごと運び、新米ママのサポートをしていたのです。新米ママは赤ちゃんのお世話だけすればいいよ、新米パパも家事でたいへんだから、お鍋をあっためればいいだけにしておくね、というように助け合っていて、それがそのコミュニティでは当然のことになっていました。こうして一人ひとりが助け合い、豊かに生きているのを見て、まさに『子は社会の宝』を体現していると感じました。そのような環境においては、子育てというのは、親だけの問題ではなくコミュニティ全体の取り組みになりますよね」

 しかし、地縁が希薄になり、コロナ下で人と触れ合いにくくなった現代の日本では、子育てを家族だけで抱え込んで苦しむケースが少なくありません。

 「付き合いの範囲を広げるのは面倒で煩わしいと思うかもしれませんが、ぜひ、いろいろなコミュニティとつながりを持ちましょう。シルバーさんやママ友・パパ友、近所の人などと積極的に接点を持ち、お互いを思いやりながら、温かいコミュニティを築く。それが、社会で子育てをすることになります」

 そして、そのコミュニティに、何かあれば頼ることが大事だと言います。「頼る力は生き抜く力でもあります。子どものころから『周りに迷惑をかけないようにすること』と育てられてきた人にとっては、子育てにおいても『すべて自分でやらなくてはいけない』と思い込んでいる人がいるかもしれません。しかし、周りの人と関わり、時には『子育てがしんどいので助けてほしい』と声を上げることはとても大切です」

次ページから読める内容

  • 頼れるコミュニティのつくり方
  • 自分が育った過程を捉えて生かすのは認知の仕方次第

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