「自分の親」の子育て方針は、自分自身の子育てにも知らず知らずのうちに影響を与えているもの。生活面や勉強面、性教育などにおいて「自分がどう育てられたか」を振り返り、「まねしたい点」や「反面教師にしたい点」、「子世代に受け継ぎたい点」や「時代に合わせてアップデートしたい点」をフラットな視点で冷静に分析してみませんか。子育てが楽になるだけでなく、わが子の「生きる力」を伸ばすことにもつながるはずです。

性教育は「社会で生き抜くための教育」

 子どもの頃に、親から性に関して教えてもらっていなかったり、性に関わる言葉をタブー視するような空気が家庭内にあったりしたせいで、性教育に苦手意識があるというママパパは少なくないでしょう。

 「子ども時代に、性に関する質問をして、親にはぐらかされた経験が忘れられないという人は少なくないです」。チャンネル登録者15万人以上の性教育YouTuberで、助産師のシオリーヌ(大貫詩織)さんは言います。「自分の親が性に関する話をタブー視していたなど親からの刷り込みがあると、性の話題が何か『特別なオーラ』をまとっているように感じてしまいます。そのせいで、自分の子どもに性教育ができるか自信がないと悩む声をよく耳にします。

 そもそも日常生活の中で、子ども時代に、大人から真面目な性の話をちゃんと教えてもらったという人はあまりいないのではないでしょうか。性の話といえば、下ネタやセクハラ、消費される対象としての性、あるいは、病院で使うような医療用語といった形でしか語られてこなかったですよね」

 教えられてこなかったことに加え、最近は「ルッキズム」といった、自分たちが子どもの頃には身近でなかった言葉が登場するなど、時代の変化に伴って、性教育のあり方も「進化」しています。それゆえに、親は余計に自信を持ちにくいのかもしれません。

 生理や妊娠などの体の仕組みについて伝えるのが性教育だと捉えられがちですが、子どもが「選び取るための知識」を身に付け、「自己選択する力」を育むのが性教育だとシオリーヌさんは言います。

 「最近は日本でもSRHR(セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ=性と生殖に関する健康と権利)という言葉が少しずつ知られてきました。ありのままで、健康でいられて、社会からも認められて、自分の性や生殖に関することは自分で決められる、という権利です。それが性教育の根底にあります。ジェンダー教育も性教育に含まれると考えていますが、母親が自己犠牲に陥らずに子育てすることや、『政治とは何か』という話にもつながる、とてつもなく大事な教育が、性教育だと言えます」

 シオリーヌさん自身は、過去を振り返ると、生理のことなどについては、母親が明るく伝えてくれた一方で、ジェンダー観に関しては、父親の影響でステレオタイプを刷り込まれた、と言います。今や発信する側となったシオリーヌさんは、親の影響をどのようにポジティブな方向に変えてきたのでしょうか。

 「性教育=社会で生き抜くための教育」というシオリーヌさんに、苦手意識のある親は何から始めればいいのか、頭に入れておきたいフレーズ、アップデートしておきたいポイントなどについて、次ページから具体的に聞きました。

「性教育に自信がない」親が知っておきたい5つのポイント

(1)まずは親が「性教育とは何か」を知り、「慣れる」こと
(2)反射的に「してはいけない」2つのこと
(3)丸暗記しておきたい2つのフレーズ
(4)「親は不安でOK」という理由
(5)情報アップデートが間に合わなくても今すぐしたいこと