「自分の親」の子育て方針は、自分自身の子育てにも知らず知らずのうちに影響を与えているもの。生活面や勉強面、性教育などにおいて「自分がどう育てられたか」を振り返り、「まねしたい点」や「反面教師にしたい点」、「子世代に受け継ぎたい点」や「時代に合わせてアップデートしたい点」をフラットな視点で冷静に分析してみませんか。子育てが楽になるだけでなく、わが子の「生きる力」を伸ばすことにもつながるはずです。

親の発言や行動が子どもの可能性を奪ってしまうこともある

 子どもの教育において、今の時代は「知識を暗記することよりも、自分の頭で考えて自分なりの答えを出すことが大切」などと言われます。しかし親世代が小・中学生だったころはそのような考え方は浸透していませんでした。自分の親から「とにかく教科書に載っている内容はすべて暗記しなさい」といった教育を受けてきた人も少なくないはずです。そうした「自分の親から受けてきた指導」が、今の自分の子育てに、知らず知らずのうちに影響を受けているかもしれません。

 このような勉強のやり方だけでなく、学校や進路の選び方などでも、親のほうが子ども世代の考え方について行けず、親がストッパーやリミッターになってしまう可能性があるかもしれません。親世代と子世代の教育における常識のギャップをどう埋めていけばいいのでしょうか。

 多くの子どもたちを指導し、その親たちとも面談をしてきた坪田信貴さんは、「どんな親でも将来の子どもの幸せを願っています。でも、親の発言や行動が、実は子どもの可能性を奪ってしまうこともあるのです」と言います。

 「今は学びや進路でも、選択肢が多い時代です。価値観も多様化していて、『偏差値の高い学校に行って、大学を出て、一流企業に就職すればいい』ということもありません。しかし親がストッパーとなってしまうこともあります。例えばいま、世の中ではタブレット学習が一般的になっていますが、ダブレットで勉強することに違和感を持つ親は少なくないかもしれません。それは、親自身に『勉強は紙と鉛筆を使って、学習机に座ってやるものだ。タブレット学習だと勉強が身に付かない』というバイアスがかかっていたり、自分が経験したことがないことに子どもが取り組むことに不安を抱いたりして反対しているだけなのです」

 親自身が、そのまた親世代から、無意識のうちにいろいろなバイアスを受けていることを自覚したほうがいい、と坪田さんは指摘します。

 「私たちの思考は言葉で成り立っていますが、その言葉は主に親の話し方をまねて獲得しているわけです。親は日本語を話すのに、子どもがいきなり英語でしゃべり出すなんてことはないですよね。どの言語を選択するかという時点で、既に親の思考が影響しているのです。このように人は必ず誰かに影響を受けているもので、自分をフラットに見ること自体がとても難しいのです」

 「そういうものだから聞きなさい」と自分が言われてきたことや自分が受けているバイアスを子どもにもバトンのように渡していないでしょうか。立ち止まって考えることが必要です。自覚しにくい「親の昭和思考」、気付くにはどうしたらいいのでしょうか。

ビリギャル・坪田さん 親としての自分の思考が「昭和的思考」に陥っていないか? 振り返る3つのヒント

坪田塾塾長の坪田信貴さん
坪田塾塾長の坪田信貴さん
●ヒント1
「そういうものだから聞きなさい」と自分が言われてきたことや
自分が受けているバイアスを
子どもにもバトンのように渡していないか?

●ヒント2
ジェネレーションギャップの大きさを認識しているか?

●ヒント3
自分が理解できないことを子どもがやることに
不安を抱いて反対しているだけではないか?