グローバル化が急速に進んでいます。わが子が社会に出るころには、同僚や取引先に外国人がいたり、海外市場を見据えて仕事をしたりするのが当たり前の世の中になっているはず。英語は今以上に必須スキルになることは確実です。中学受験で英語入試があったり、英検取得が受験に有利な学校も登場しています。今こそ子どもたちの将来を意識した英語教育を始めるとき! では、親はどうサポートすればいいのでしょうか。専門家に聞きました。

「My English is poor.」と言ってしまう日本人

 早稲田大学ビジネススクール教授として、日ごろからビジネスパーソンの卵に接している入山章栄さん。生徒は国内企業の出身者だけでなく、留学生も多く、自身も米ピッツバーグ大学やニューヨーク州立大学で10年近く英語で教えた経験があることから、日本の英語教育に課題を感じていると言います。これから世界へ羽ばたく子どもたちにはどのような英語力が必要なのか、そのために親ができることは何かを、経営学の立場から話してもらいました。


 I’m sorry. My English is poor.

 外国人を前に英語で話すときに、こんなエクスキューズをしてしまったことはないでしょうか。

 入山さんの勤める早稲田大学の大学院でも、英語で発表する際にこのように断ってから話す日本人学生が多いのだそうです。早稲田大学ビジネススクールには留学生も多く、彼らは皆、英語がペラペラなのは当たり前。3~4カ国語話せる人が多いそうです。一方、日本人学生は名だたる企業から派遣されている人が多いものの、英語は苦手な人が多数派。留学生を前に英語で発表するときに、つい、エクスキューズしたくなるのももっともかもしれません。

 しかし入山さんは「そんなことを言う必要は全くないのですが……」と眉をひそめます。「英語というと、米国人がペラペラ話しているのを思い浮かべると思いますが、世界で一番話されているのは、非ネーティブが堂々と話す『いい加減な』英語です。それは流ちょうでもきれいな発音でもなく、文法もあまり正しくはありません。でも彼らはヘタでもいい、なんとなく伝わればいいと思っているから、堂々と話せるのです。

 以前出席した国際学会では、会長が非ネーティブの人でした。強いなまりがあって、何を言っているのか聞き取りづらかったのです。それでも堂々と話しているので、みんなよく聞いています。するとなんとか伝わってくるんです。国際社会では、ヘタでもいいから堂々と話すことに尽きると感じました」

 日本人は、文法はしっかり教えられているため、ペーパーテストは優秀です。しかし実際に英語を話したり、他の人の英語を聞いたりする実践の場は全く足りていないと入山さんは指摘します。「場数が豊富なら、『ヘタでも堂々と話せばいい』と思うマインドを持つことができます。しかしその機会がないために、堂々と話せず、つい、冒頭のようなエクスキューズをしてしまうのでしょう」

【次ページから読める内容】

●「ヘタでも堂々と話せばいい」と思えない人が多数派
その結果、グローバル化が進んだ世界で、日本経済は低迷
学術界でも自然言語を使って議論する分野ではガラパゴス状態に。

●子どもたちが社会に出る頃どうなっている?

入山さんは「日本語だけで間に合わせる層と、英語自己価値を上げる層の二極化が進む」と予測。
そのとき、子どもの選択肢を増やすために親がすべきことは?

英語に苦手意識のある日本人がつい言ってしまうフレーズだが、これ自体が実は「ちょっと微妙」な英語。poorではなくbadのほうが自然
英語に苦手意識のある日本人がつい言ってしまうフレーズだが、これ自体が実は「ちょっと微妙」な英語。poorではなくbadのほうが自然