習い事を始めたのはいいけれど、日々の練習に親子でストレスを抱え、想定外の親負担や子どもの「やめたい」発言にうんざりすることも。「親子で幸せな習い事生活を送るには?」「そもそも幼い時にお稽古事って必要?」…そんな素朴な疑問に答えるべく、各方面の専門家に取材し、「子どもが習い事をする意味」について徹底検証しました。実は、意味のある経験になるかどうかは、習い事の最大の難所である「やめどき」にあるのだとか。そのためにも習い事のゴールを考えておくことが大切なようです。東大生の大半が習っていた「水泳」「ピアノ」の知られざる効果や、「習い事をしない」選択をした場合に親が知っておきたいことなども紹介。子どもにとって習い事やそれに代わる経験を貴重な時間にするためのヒントを探ります。

楽しいと思えば、学びは後からついてくる

 親が子どもに、運動系の習い事をさせたい理由はさまざま。「子どもが体を動かす遊びが好きで、毎日体力を持て余している様子だから」「室内遊びばかりしているわが子に、運動する機会を増やしてあげたいから」などと、単に「運動量を増やすこと」が主な目的である場合もあれば、「運動で活躍できる子になって、自信を深めてほしい」「根気強さや集中力などを身に付けてほしい」など、具体的なメリットに目を向けている場合もあるでしょう。

 しかし、8歳で地域の陸上教室に通い始めたことをきっかけに、陸上の世界に足を踏み入れ、これまで世界陸上やオリンピックでトップアスリートとして活躍してきた為末大さんは、「親がこのスポーツから何が得られるか、といった効果を求めすぎると、子どもは楽しくなくなってしまう恐れがある」と指摘します。

 「確かにスポーツからは、判断力やチーム力、継続する力といった学びや能力が得られます。でもそれは、継続して後から振り返ったときに結果として身に付いているもの。習い事として取り組む場合も、最初から効果を追い求めるのではなく、まずは子ども自身が『楽しそう』と思う気持ちをスタート地点にしてほしい。遊び感覚で自由にのびのびと体を動かし自然に楽しいと思えれば、学びは必ず後からついてくるはずです」とアドバイスします。

 また、「運動が得意な子にしたい」という思いが強い親は、「早い段階で、わが子にぴったりのスポーツを見つけてあげたい」と考えがちですが、その考え方も正しくないと言います。

 詳しく聞いていきましょう。

●この記事で分かること
・「早い段階で、わが子にぴったりのスポーツを見つけてあげたい」という考え方は間違い

・子どもの頃に多様な運動体験をしておくといい理由

・特に幼少期に経験しておくとよい運動は

・陸上経験を通じて為末さんが身に付けた、社会人になっても役立っている能力や習慣

・チームスポーツは社会に出てから役立つ

・子のスポーツ熱への正しい寄り添い方
インタビューに答えてくれた為末大さん。現役引退後は、執筆活動や企業経営に関わる。小学校低学年の男の子の父親でもある
インタビューに答えてくれた為末大さん。現役引退後は、執筆活動や企業経営に関わる。小学校低学年の男の子の父親でもある