習い事を始めたのはいいけれど、日々の練習に親子でストレスを抱え、想定外の親負担や子どもの「やめたい」発言にうんざりすることも。「親子で幸せな習い事生活を送るには?」「そもそも幼い時にお稽古事って必要?」…そんな素朴な疑問に答えるべく、各方面の専門家に取材し、「子どもが習い事をする意味」について徹底検証しました。実は、意味のある経験になるかどうかは、習い事の最大の難所である「やめどき」にあるのだとか。そのためにも習い事のゴールを考えておくことが大切なようです。東大生の大半が習っていた「水泳」「ピアノ」の知られざる効果や、「習い事をしない」選択をした場合に親が知っておきたいことなども紹介。子どもにとって習い事やそれに代わる経験を貴重な時間にするためのヒントを探ります。

 プログラミングや実験教室など、子どもの習い事が多様化する中、昔も今も変わらず「定番の習い事」として不動の人気を誇るのが「ピアノ」や「水泳」。本特集2本目と3本目では、「定番習い事」の中でも、特に東大生の半数以上が習っていたというデータもある「ピアノ」と「水泳」について深掘りしていきます。

論理的思考やマルチタスク能力が身に付く

 「音楽を通して豊かな教養を身に付けてほしい」「好きな曲を弾けるようになったら、きっと楽しいはず」といった期待を込めてピアノを習わせている、あるいは、これから習わせたいと考えている家庭も少なくないのではないでしょうか。

 東大家庭教師友の会が2014年に東大生を対象に実施した「習い事に関する調査」で、東大生の2人に1人がピアノを習っていたことが分かりました。こう聞くと、ピアノを習うことが学力アップにつながるのかと気になる人は多いはず。名古屋芸術大学芸術学部音楽領域教授の大内孝夫さんは「ピアノが直接学力を高めるわけではない」と前置きしつつも、「コツコツと継続的に取り組むことで得られるものは多い」と指摘します。

 例えば、論理的思考もその1つ。「ピアノは感性と同時に、楽譜を読み込んで楽曲の構造を理解する過程で論理的思考をも育むことができます」。楽譜とは、記号を用いて作品全体を表すもの。複雑な楽曲になると記号の並びも複雑になりますが、それらは決して不規則に並んでいるわけではなく、そこには高度に計算されたロジックが存在します。それらを読み取って理解することを繰り返すことで、論理的思考が育まれる、というわけです。

 「また、ピアノを弾くには両手と右足を同時に、かつ滑らかに動かすことが求められますが、そうしたピアノの動作で身に付くマルチタスク能力は、英数国理社の5教科7科目を幅広くムラなく勉強することにもつながっていきます。

 さらに、ピアノ教室は発表会を定期的に行うところが多く、人に聞かせられるレベルまで課題曲を仕上げなければいけないので、計画的にコツコツ練習する必要もあります。それは受験勉強をするときに、時間をどのように使うかを考える上でも非常に役立ちます。これらのスキルが身に付く結果として、学力が上がり、受験にも強くなるのだと思います」

 とはいえ、こうした効果が得られるのは、子どもが自分からピアノに向かい、毎日コツコツ練習して、自らの意志で技術を磨いていこうとする場合に限定されます。ところが、そもそも、子どもにピアノを継続的に練習させること自体が、時間のない共働き家庭には至難の業。練習を嫌がる子どもをなだめすかせ、ピアノの前に座らせるだけで四苦八苦している家庭も少なくありません。

 子どもが自発的に練習するようになるにはどうしたらいいのでしょうか。先生の選び方や、体験レッスンでチェックすべき3つのこと、子どもがピアノを続けられるように親がすべき工夫などについて、大内さんに詳しく聞いていきます。

この記事で読める内容
●早く習い始めればいいわけではない
●子どもが楽しくピアノを続けられる先生かどうか見極めるために、体験レッスンでチェックすべき3つのこと
●日常生活にピアノが○○○○○○○○○○家庭の子どもは長続きする