家事シェアは子どもの自己肯定感を高め、生きる力につながる

 河崎さんは「家は子どもの生きる力を育む場所」と話します。「テリトリーを確保してあげることは精神的な自立につながりますが、同時に料理や掃除といった生活のスキルを教えることも大切です」

 「料理は危険が伴い、掃除も親がやってあげる方が早いので、避けていた家庭もあるでしょう。でも、今は親も以前よりは時間が取れるのではないでしょうか。ウィズコロナの暮らしを子どもの家事スキルを上げるチャンスと捉え、包丁や火の安全な扱い方や簡単な料理、掃除の方法を教えましょう。幼児でも食卓を拭いたり、キュウリを切ったりすることはできるので、家族みんなで家事を分担するといいですね」

 「その際、掃除道具やキッチンツールは誰が見ても、どこに何があるか、片付けるときもどこに置いたらいいか、パッと分かるようにしておきましょう。ティッシュやトイレットペーパーのストックがどこにあるかも教えておけば、子どもが自分で補充してくれるようになります。『自分にもできる! 家族の役に立っている』という思いは、子どもの自己肯定感を高めることにもつながっていきます


 特集第2回、3回では、子育てのゴールである子どもの自立に向けて、リビングのものの置き方を工夫している4人の子のママの事例を紹介します。自分自身が片付けが苦手で苦労した経験から、収納のプロになったというママの自宅では、小学生2人、保育園児2人それぞれの子どもが自分で身支度ができるように物の置き方を工夫。大切なのは、完成形ではなく、そこに至るまでのトライ・アンド・エラーという考え方は、これから正解のない時代を生きる子どもに接する上でのヒントになるでしょう。子どもが育つ空間としてリビングをどう活用しているかも参考になります。どうぞご期待ください。

藤原 忍・渡邉理恵
ともに建築士、OZONE住まいづくりコンサルタント
住まい・インテリアに関連したプロフェッショナルや企業の情報収集・発信を行うリビングデザインセンターOZONE内のサービス「OZONE家design」で中立な立場から、顧客のかなえたい暮らし、想い描く住まいをつくる最適なプロセスを提案したり、施主と設計者、施工者とのコミュニケーションをフォローする役割を担っている。

河崎由美子
積水ハウス住生活研究所長、1級建築士
1987年積水ハウス入社。キッズデザイン、ペット共生、収納、食空間、ユニバーサルデザインなど、暮らしについて研究を続けてきた、住生活提案のプロフェッショナル。キッズデザイン協議会理事。

取材・文/福本千秋(日経DUAL編集部) イメージ写真/PIXTA