子どもはテリトリーを広げることで自立に向かっていく

 テリトリーをつくるというと部屋やコーナーを連想しますが、赤ちゃん時代はベビーチェアからスタートすればよいそうです。「おもちゃを入れるかご1つでもかまいません。ポイントはそこが、本当にその子にとっての“治外法権”の場所だということ。もちろん、掃除をするなどの親の関わりは必要です。しかし、基本的には子ども自身の居場所なのだと尊重してあげてください」(河崎さん)

 なぜテリトリーが大切なのでしょうか。「子どもは生まれてから保育園時代までは親と共に過ごす時間が長いですが、小学校、中学校と徐々に親から離れていきます。その後、独立していくことがゴールですが、子どもはそれまでに自分で生きる力を身に付け、親から離れることを少しずつ学ばなければなりません。そこで大きな役割を果たすのが、自分の世界であるテリトリーです

 赤ちゃんのときにおもちゃのかご1つから始まったテリトリーは、椅子やデスク、棚などが加わり、少しずつ広がっていきます。親の目が必要な時期はテリトリーの場所はリビングが適していますが、思春期になると親の目から離れたところをテリトリーにしたいという子も出てきます。それが子ども部屋です。

子ども部屋は個室でなくてOK。必要な要素は一人になれること

 河崎さんは、子ども部屋は必ずしも完全な個室である必要はないと話します。「リビングや共用の子ども部屋の隅を利用して、背の高い本棚と机をL字に配置すれば、個室感のあるコーナーがつくれます。大切なのは子どもが一人で自分に向かい合える場所を確保してあげることです」

 その時期はいつごろなのでしょうか。河崎さんによると、女の子は小学校3年生くらいから個室を欲しがる子が出てくるそうです。男の子は個人差が大きく、思春期になっても欲しがらない子もいます。「それでも『ちょっと家族と離れていたいな』と思うことはあります。そういうとき一人になれる場所が家の中にあるといいですね」

 子どもの心が安定するには、自分のテリトリーに愛着を持てることも大切です。「子ども部屋のカーテンや壁紙、家具や小物はできるだけ自分で選ばせてあげましょう。自分で決めたものがあると、子どもはその場所に愛着を持つようになり、安心して育っていきます