「無理せず仕事と育児を両立したい」「子どもと過ごす時間をなるべく増やしたい」「子どもの生活リズムを守りたい」…。短時間(時短)勤務中の人が制度を利用している理由はそれぞれですが、皆が一様に感じているのは、「このまま時短を続けていて大丈夫?」という迷い。日経DUALが実施したアンケート調査でも、350人近くの時短ママたちから「キャリアの展望が開けない」「仕事でやりがいが感じられない」「収入が下がっているのに仕事量はそれほど減らしてもらえない」「職場で居づらい」といったさまざまな不安や不満、悩みの声が寄せられました。そこで、時短ママたちがはまりがちな「キャリア迷路」を抜け出す方法を徹底取材。時短勤務でもキャリアアップする方法、フルタイム勤務へのスムーズな移行法も紹介します。

 「とりあえずの短時間(時短)勤務」で職場に居場所を失うリスクがあることについて、前回の記事でお伝えしました。ただ、実際は時短ママは「ワンオペで頑張るしかない状況だから」「職場が遠くて保育園のお迎えに間に合わないから」など、避けようのない理由で時短勤務を選択している人がほとんど。「時短だけどキャリアを諦めている訳ではない」「昇進を目指したい」と考えている人も少なくありません。

 実際、日経DUALが実施した読者アンケートでも、時短勤務をしている(した経験がある)310人を対象に悩みを聞いたところ、評価面で悩んでいる人が55.6%、昇進面で悩んでいる人が53.2%(重複あり)に上りました(詳細は本特集1本目記事、「345人の悩める『時短ママ』がモヤモヤを吐露」参照)。

 ただ、「時短だからキャリアアップや昇進を諦めなければならない」というのは大きな誤解。「時短勤務をする時期があっても、将来のキャリアップは十分考えられます」と、転職・人材派遣サービス大手のパソナで常務執行役員を務め、自身も育児を理由とする時短勤務の経験者である岩下純子さんは話します。

 「大切なのは、最終的にどうなりたいかをイメージした上で、逆算して行動すること」と話す岩下さんに、時短勤務中に心掛けたい、キャリアップを見据えた働き方についてアドバイスしてもらいました。

 実は、時短勤務当事者に対する周囲のイメージと、本人が持つ自己イメージの間には大きなギャップがある場合が多い、と岩下さんは指摘します。

 「働き方改革の流れの中で、昔のように早く帰ることについての周囲の反発は少なくなってきていますが、時短勤務者は、良くも悪くも『キャリアとプライベートをバランスよく取ろうとしている人』という目で見られる可能性があることを自覚しておいたほうがいいと思います。周囲は時短勤務者に対して、『いざというときに踏ん張りがきかない人』というレッテルを貼りがちです」

 また、働き方改革が浸透して、育児休業や時短勤務への理解が進む昨今においては、逆に周囲の過剰な「気遣い」や「配慮」が、キャリアアップにおいては思わぬリスクを生む恐れも。

 「周囲の社員に悪気はなくても、『あの人は子育てで大変だから』と重要な仕事を振られなくなったり『今の時期に部下を持つのは大変だろう』と昇進を見送られたりするなど、しっかり働きたいと思っている本人との認識の違いがキャリアアップの妨げになる恐れもあります」。そうした配慮に甘んじていると、実績が積み上がらないため、どうしても「組織への貢献が十分でない」社員としてみなされてしまいがち。その結果、希望をかなえてもらえないなどで、キャリア迷路にはまってしまうリスクも(詳細は、前回記事「時短勤務の落とし穴 職場に居場所失うことも」の【落とし穴2】参照)。

 時短勤務をしながらキャリアアップを目指すなら、まずは「周囲の誤解を解くべき」と岩下さんは言います。

パソナ岩下さんのアドバイスを7カ条にまとめたもの。写真は岩下さん。詳細は次ページから
パソナ岩下さんのアドバイスを7カ条にまとめたもの。写真は岩下さん。詳細は次ページから