共働き子育て中で毎日バタバタ。日々必死に生活を回しているのに、仕事は思うように進まないし、子どもに関しては心配ごとが山積み。いったい自分はどこに向かっているのだろう。こんなに余裕がない日々の中で、わが子はちゃんと育つのだろうか――。こんな風に、ついネガティブな気持ちになり、不安感や閉塞感から抜け出せないでいるとき、共働き子育ての先輩ママやパパの言葉に救われ、出口が見つかるきっかけになるかもしれません。今回、DUALでは、各界で活躍してきた先輩親の皆さまに取材。後輩親に伝えたい「本当に大切なこと」を教えていただきました。「正解は一つではない」こと、目の前の何気ない日常こそがいとおしく、大切にすべきものだということが分かるはずです。

うつ病も離婚も経験し、決して順風満帆という訳ではなかったが…

 東京大学大学院総合文化研究科教授で、ジェンダー論研究者の瀬地山角さん。東大で大人気という講義の番外編として出版した『炎上CMでよみとくジェンダー論』(光文社新書)が大きな話題になりました。父親としては、パートナーとともに二人の子どもを育て、現在、娘は大学3年生、息子は高校3年生です。

 1963年生まれの瀬地山さんは、「育児は女性の仕事」という価値観に支配されてきた世代といえますが、第1子出産直後からパートナーと家事・育児を分担してきました。いわば「イクメン」の先駆けですが、「イクメンという言葉は大嫌い」と話します。

 「子育てに積極的に関わる父親を指す言葉なのでしょうが、父親が自分の子どもの育児をするのは当たり前です。それが当たり前ではない社会だから、こんな言葉が成立してしまうのだと思います。たぶん海外では意味が通じないでしょう。イクメンを英訳すれば、『Father』としか言いようがありません」

 厚生労働省が毎年実施する「雇用均等基本調査」で2021年度の男性育児休業の取得率は13.97%と過去最高値を更新しました。しかし瀬地山さんは、「取得期間は2週間未満がほとんど。育休を取っているうちに入りません。男性の育休は取得率とともに、取得期間にもしっかり目を向ける必要がある」と、男性が育児になかなか関われない日本の現状に厳しい目を向けます。

 自身が子育てをしてきた20余年は、離婚、うつ病の発症などもあって、決して順風満帆というわけではありませんでした。でも、「子育てでやり残したことは思いつかない。後悔もほとんどない」といいます。そんなふうに言い切れる瀬地山さんの子育て経験は、どうようなものだったのでしょうか。自身や子どもの中学受験経験や、その結果から分かったことなど、教育面についても振り返り、存分に語っていただきました。

東大教授・ジェンダー専門家の先輩パパから学べること

1.父親が育児にコミットしないことで、子どもの「初めて」に出合えないのは純粋に「もったいない」。今も子どもから旅行に誘ってもらえる親子関係を維持

2.アクセル全開で仕事に向かえないジレンマがあり、うつに悩まされたが、結果的に「子どもの存在」に救われた。「ノーベル賞を2つあげるといわれても、盆と正月以外は研究室にいるような生活を送りたかったとは思わない」

3.「潰れてしまうのでは」と葛藤を抱えながらも長女の英語教育に熱心に取り組んだ理由は

4.娘も息子も公立中→都立高。「小学6年生の学力で入れる学校を受験して入ったところで、かえって、その後の道を狭めてしまうこともあるのでは?」
息子が小3の時、一緒に見た蔵王の樹氷。「スキーがしたい息子とも『こりゃスキーしてる場合じゃないね』と樹氷巡りをしました」
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