共働き子育て中で毎日バタバタ。日々必死に生活を回しているのに、仕事は思うように進まないし、子どもに関しては心配ごとが山積み。いったい自分はどこに向かっているのだろう。こんなに余裕がない日々の中で、わが子はちゃんと育つのだろうか――。こんな風に、ついネガティブな気持ちになり、不安感や閉塞感から抜け出せないでいるとき、共働き子育ての先輩ママやパパの言葉に救われ、出口が見つかるきっかけになるかもしれません。今回、DUALでは、各界で活躍してきた先輩親の皆さまに取材。後輩親に伝えたい「本当に大切なこと」を教えていただきました。「正解は一つではない」こと、目の前の何気ない日常こそがいとおしく、大切にすべきものだということが分かるはずです。

中学受験をさせてよかった

 長男の中学受験体験をコミカルにつづった『偏差値30からの中学受験合格記』(学研プラス)が、受験親からバイブル本と評され人気になり、以来20年近くにわたって受験事情を取材する作家の鳥居りんこさん。運営するサイト内では中学受験を経て中高一貫校に進学するも、成績が落ち込んだまま浮上しない生徒を指す「深海魚」という言葉も生み出されました。そんな鳥居さんが、自身の「中学受験親」時代を振り返り、今だから言える「中学受験の真実」を話してくれました。

 著書では、鳥居さんが強い口調で長男に勉強を促す様子なども描かれ、志望校への合格までの道のりは大変だったことが伝わってきます。それでも当時を振り返って、「中学受験をさせてよかった」と話します。「それは受験を通して、社会で生きていく上で土台となる力を子ども自身の努力で身に付けることができたと思っているからです」

 そして、「子どもと闘った中学受験は得がたい体験で、どこを切り取ってもかけがえのない時間でした」と話します。

 「精いっぱい、時間もお金も労力もかけて、わが身を削ってきました。一生懸命であることが、楽しかったと言えます。子どもを通して自己実現しようとしたり、成績のよい子どもに嫉妬したりもしました。自分の育て方が悪かったんじゃないかと悩み、夫ともけんかして、『人生詰んだな』と思うことも多々ありました。

 そもそも中学受験は、業火(ごうか)に焼かれるようなもの(笑)。家族でぶつかり合い、おどろおどろしい経験をしたからこそ、得られた気づきはたくさんあります。しかし受験を終えて、最後に心に残ったのは『私に子育ての経験を積ませてくれて、ありがとう』という温かい感謝の気持ちでした。子育ては『親育て』といいますが、その中で中学受験は親にとっても最たる成長の機会だったなと振り返って思います」

 中学受験を終えた長男が私立中高一貫校に入学後、「一時期は不登校気味になったし、『深海魚』も経験した」と言う鳥居さん。中学受験のその後について耳にする機会はそう多くない上に、受験から20年を経て、すでに独立して所帯を持った長男とは「1年のうち数時間しか対面しないけれど、良好な関係」という親子の現在地から、経てきた中学受験を俯瞰(ふかん)する視点は貴重です。今改めて思う「中学受験で後悔していること」について聞くと、大きく3つあるといいます

鳥居りんこ 中学受験親としての後悔は大きく3つ

1.塾代や費用を「コスパ」で考えることで、迷走の原因を作った
2.偏差値至上主義になり、子どもに「勉強しろ」とお尻を叩きまくってしまった
3.聞き分けのいい子でいてほしいと思い、子どもに考える余裕を与えなかった

 では、詳しく聞いていきましょう。