過熱する中学受験を回避したい、地元の小学校とは違う教育環境で過ごさせてあげたい……。これまで「専業主婦家庭のためのもの」と思われていた「小学校受験」に、共働き家庭が挑むケースが増えているといいます。とはいえ、いわゆる「お受験」は、本当に共働き家庭でもできるものなのでしょうか? 本特集では、 そもそも小学校受験をする必要があるのか、ないのか? を知るべく、小学校受験のメリット・デメリット、受験塾や入学後のお金事情、お受験の内容、共働き家庭にお勧めの私立・国立小学校について、専門家や経験者を徹底取材しました。

増え続ける小学校受験の志願者 半数以上が共働き家庭

 小学校受験は「お受験」などといわれ、専業主婦家庭の親が、わが子につきっきりでお受験準備をするイメージがあるかもしれません。しかし、それはすでに過去の話だと話すのは、中学受験対策研究所及び小学校受験対策研究所を立ち上げ、webサイト「中学受験スタディ」、小学校受験の「お受験じょうほう」を発信するバレクセル代表の野倉学さんです。

 「小学校受験の志願者は年々増加傾向にあります。中でも、コロナ下である2020年度入試は、1都3県の志願者数が、私立・国立ともに前年度を大きく上回る結果となりました。それらの受験生のうち、半数以上が共働き家庭の子どもだといわれています」

出典:小学校受験対策研究所、バレクセル、お受験情報。調査対象は首都圏(東京、神奈川、埼玉、千葉、茨城)の私立98校及び国立10校の計108校
※志願者数は、調査対象校のうち5年連続のデータが明らかな学校のみ集計(2019年開校の東京農業大学稲花小学校を含む)
※男女別の内訳が判明しているものを集計

 その理由について、野倉さんは「根底にあるのは、公立小学校の教育への不信感だと思います。昨年度は、コロナ下で公立小学校の対応に危機感を持った保護者が、私立などに流れたことが予想されます」と話します。

 とはいえ小学校受験は、例えば、人気私立として知られる慶應義塾幼稚舎だと、例年、倍率が10倍以上に上る狭き門。5倍以上という小学校も珍しくはありません。その上、自分で塾に行き、一人でも机に向かえるようになる小学校高学年とは違い、未就学児が主役の小学校受験は、お受験塾にもフルに付き添わなければならず、宿題をさせるにしてもフルサポートが必要。共働き家庭にとっては、お受験準備そのもののハードルが非常に高いのです。もちろん、早期教育に対する懸念や金銭的、時間的な負担などもあるでしょう。

 そこで今回は、子育て真っ最中の4人の編集部員が編集会議を開いて、小学校受験の素朴な疑問を洗い出しました。まずは、小学校受験の何が「分からない」のかを知り、それぞれの疑問を専門家や経験者に徹底取材することにしました。


共働き家庭で「お受験」をする理由とは?

編集A(小3と年長児のママ) 最近、共働きでも小学校受験をする人が増えてきた実感があります。私のママ友にも、私立や国立の小学校に子どもを通わせている人がポツポツいるんですよね。

 とはいえ、私自身は、未就学時期の早い段階から子どもの人生を、親が決定づけてしまうことに抵抗があるし、正直、小学校受験自体、よく分かっていません。ただ、公立の小学校入学後に私立小学校へ編入できることもあるみたいですし、地元の公立小以外を分からないまま選択肢から外して、後悔することになるのは嫌だなあ、というのが本音です。

編集C(小3、年中児のママ) 同感です。私も、「お受験」という名前からして、どこかでまだ「時間的に余裕のある専業主婦家庭のもの」といったイメージが拭えていません。それだけにむしろ、共働き家庭でわざわざ小学校受験をする人は、何を求めて受験しようと思っているのかが知りたいです。