今、多様なジャンルで「持続可能」がキーワードになっています。ワーママの働き方でも同様です。コロナ下で在宅勤務が普及し、時短を取らなくてもフルタイムを維持しやすくなったことで、キャリアも育児も両方を追っていきたいと考えている人が増えています。一方で、仕事と家事・育児のメリハリがなくなっていると感じている人もいるでしょう。キャリアダウンはしたくない、仕事のやりがいや成長は諦めない。でも、睡眠時間や子どもとの触れ合いを犠牲にするなど、無理もしたくない……。

仕事を上手にコントロールし、長期的に仕事と育児を持続していく意識はますます必要になっていきます。この、持続可能な「エコドライブなキャリア=エコキャリ」実現のために、これからのワーママが身に付けるべき戦略をお伝えします。

リーマン・ショック後に新卒入社「会社は自分を守ってくれない」

 「『仕事は、何かを我慢してやるべきこと』というのは思い込みだと考えています。一緒に働く人みんなが理想の働き方を目指し、気持ちよく働けるように協力し合うことができれば、働く時間は絶対に楽しくなります」

 2年半の「ダブル正社員」を経て、現在は「週3正社員、週2フリーランス」という働き方をしている、IT関連企業のガイアックス スタートアップ スタジオPRの蓑口(みのぐち)恵美さん(35歳)。神奈川県と富山県という二拠点生活で、1歳5カ月の子どもを育てるママでもあります。

 富山県出身で、地方における雇用創出などの仕事に取り組んできた蓑口さん。「価値が育つ環境をつくる」をライフミッションとして掲げ、それを実現するために、「自分の働き方を自分でつくる」を実践してきました

 自分自身の「やりたいこと」を強いエンジンにしながら、無理なく自分らしい働き方を模索するのも「持続可能な働き方」の一つです。「自分だけでなく、周囲の人からも『つぶやき』を引き出し、みんなが自分にとっての『理想の働き方』をつぶやき続けることが大事だと思います」と蓑口さん。

 既存の働き方や思い込みの枠内にいるだけでは、実現へ向かう方策は見えづらいもの。「ダブル正社員」といった先駆的な働き方は、蓑口さんの「理想の働き方を諦めない姿勢」の結実でもあります。

 「以前は、『会社に自分を当てはめる』という働き方しか存在しないと思っていましたが、ダブル正社員という前例のない働き方を実践したことで、働き方をつくることは可能だと分かりました

ガイアックス スタートアップ スタジオPRの蓑口恵美さん
ガイアックス スタートアップ スタジオPRの蓑口恵美さん

 蓑口さんは、リーマン・ショック後に新卒の就職活動を経験し、103社から「お祈りメール=不合格通知」をもらったと振り返ります。「なんとか就職した外資系広告代理店で入社1年目に、近くに座っていた先輩社員が上司から『明日から来なくていいから』と言われ段ボール箱をまとめて帰ったのを見て、明日は我が身かもと衝撃を受けました」

 会社は自分を守ってくれない、自分を守れるのは自分だけ。会社の中で必要とされる人材になるのではなく、社会の中で必要とされる人材になろう。社会人1年目でそう感じたという蓑口さん。「たとえ首を切られてもどこにでも拾ってもらえる人材になるよう頑張れたので、長い目で見ると、自分のキャリアにおいて、いい経験でした」

 「仕事大好き」で、働き方を「カスタマイズ」し続けてきた蓑口さん。先進例ともいえる蓑口さんの姿勢や試みは、自分で仕事と育児のバランスをハンドリングして、持続可能な働き方を模索する上でのヒントが詰まっています。蓑口さんが工夫してきたことや、それに伴う覚悟などについて、次ページから具体的に聞きます。

蓑口さんの「技」と覚悟
5つのポイント


ポイント(1)ライフミッションが持続の「エンジン」
ポイント(2)実践することで「働き方は自分でつくれる」を理解する
ポイント(3)自分だけではなく周囲の働き方も変える
ポイント(4)一緒に働く人の「理想」を引き出し、自分の理想もつぶやく
ポイント(5)自分自身が「自身の価値」を信じる