すぐ泣いたりわめいたりするのは自然なこと? それとも、打たれ弱い性格なのかも…? そんなふうに子のメンタルに不安を抱える場面はあるかもしれません。この先、子どもが何か困ったことにぶち当たっても壁を乗り越えていけるように、身に付けたいのは、強くてしなやかな心。そうした心を育てるために、子どもとの関わりの中で親ができることはあるでしょうか。専門家を取材しました。

その日学校に行くか行かないか、よりも大切なこと

 いよいよ新学期が始まります。夏休み明けは不登校になる子どもが増える傾向がありますが、今年は例年以上に、その懸念が高まっています。新型コロナウイルスの影響により、春に長い休校期間があり、分散登校を経て、ようやく学校が始まって慣れてきたところに夏休みに突入。例年より短い夏休みでした。目まぐるしい変化の中、子どもも心身の疲れやストレスがたまっているでしょう。

 もし、子どもが「学校に行きたくない」「きょうは休みたい」と口にしたら、どうすればいいでしょうか。過去に自身がうつ病を克服した経験があり、『心が折れない子を育てる親の習慣』(KADOKAWA)などの著書もある、精神科医の宮島賢也さんに聞きました。

 不登校とまでいかなくても、学校に行き渋ったり、おなかが痛いといって病院に連れていっても異常がなかったりといった小さなサインがあったときには、こじれる前に、親の接し方を見直すことが重要だと宮島さんは言います。

 「やってしまいがちだけど、実は絶対に避けたいこと」として宮島さんが挙げるのが、子どもを叱ること。不登校になってほしくない、突然休まれても仕事を調整できない、といった焦りのあまり、「何を言ってるの。学校は行かなければならない場所なの! 休むなんて許されないよ」「理由をちゃんと言いなさい」「勉強ができなくなって、落ちこぼれちゃうよ」などと、強い言葉で責めたり問い詰めたり、脅したりしてしまうのは「どれもNG」。

 「何かしらのつらい気持ちを抱えているのは、子ども自身です。そこにきて、親からも問い詰められたり、責められたりすると、『自分の気持ちを分かってくれない』『何も話したくない』と心を閉ざし、逆効果になってしまいます」

「親は、子どもが学校に行っても行かなくても、大事なわが子であることに変わりはないという姿勢を見せることが大切」と話す、宮島賢也さん
「親は、子どもが学校に行っても行かなくても、大事なわが子であることに変わりはないという姿勢を見せることが大切」と話す、宮島賢也さん

 それなら少し言葉を和らげて、「何かあったのかな?」「少しだけでもいいから教えて」などと、子どもに優しく聞いてみればいいのかというと、「それも避けたほうがいい」と宮島さん。

 「子どもに関心を持っている姿勢を示すこと自体はいいのですが、たとえ控えめな言い方をしたとしても、『学校には行ってほしい』という気持ちを込めてしまうと、子どもはそれを敏感に察し、プレッシャーを感じて、心の内を話せなくなってしまいます」

 「学校に行きたくない」には、「そうなの。学校に行きたくないんだね」と、まず子どもの言葉を受け入れること。「きょう、休みたい」と子どもが真剣に訴えてきたら、「そうなの、じゃあそうする?」と、子どもの意を通してあげることが大事だと言います。

 「親が休んでいいという姿勢を示したりしたら、子どもは安心して、そのままずるずると、完全な不登校になってしまうのでは」と心配になってしまうかもしれませんが、「その日に学校に行くか行かないか、ということよりはるかに大切なのは、まず安心させてあげること。親が子どものことを心から受け入れ、学校に行っても行かなくても、大事なわが子であることに変わりはないという姿勢を見せれば、事態は好転していきます」と宮島さんは強調します。

 幸い、今は職種によっては、状況に応じて在宅勤務に切り替えたり、オンラインで会議に参加するといった方法が可能になりました。「何がなんでも子どもに学校に行ってもらわないと自分が会社に行けず、仕事に支障を来す」といった切迫感は、以前よりは薄れてきています。ただし、子どもの気持ちにしっかり向き合い、根本的な問題の解決に取り組んでいきたいといっても、それは「学校に行きたくない具体的な理由を突き止め、解決すること」ではないと宮島さんは強調します。子どもが仮に、友達関係で悩んでいるとしても、「親の役割は友達関係を改善させるために、何かアドバイスをすることではない」というのが宮島さんの考え方です。

 その理由と、わが子が不登校や行き渋りの兆候を示したときに親が意識すべき5つのポイントを、次ページから順番に解説してもらいます。

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