子どもにこんな様子が見られたら要注意!

 前ページで紹介したのは、行き渋り・不登校を体験した日経DUAL読者から寄せられた不登校や行き渋りの前兆です(「共働き家庭の小学生の不登校・行き渋りに関するアンケート」。2019年7月実施。回答数38人)。小学生だけでなく、保育園の親からも回答があり、不登校・行き渋りが幅広い年齢の親の悩みとなっていることがうかがわれました。

 上記の前兆について、石井さんは「どれも行き渋りや不登校の典型的な前兆です。子どもは既に苦しんだり悩んだりしているのですが、親は症状の奥にある悩みを見過ごしがちで、『腹痛ならその手当て、イライラなら反抗期』という対応になることが多いのです。しかし、『お腹が痛い』の裏には、心の悩みが隠れていることもあります。子どもが行き渋りや不登校になる前のこの段階でぜひ、気付いてあげてほしいですね

 とはいえ、多忙な共働きは毎朝、毎日を乗り越えるので精いっぱいということも多いもの。子どもを大切に思う気持ちはあっても、様子を観察したり、話を聞いたりする時間はなかなか取れません。

前兆を見逃す→こじれて行き渋りや不登校に

 前兆を見逃したり、気になっていても十分なケアができなかったりした場合どうなるのでしょうか。石井さんは、子どもと大人の認識の違いにも触れながら次のように解説します。

 「前兆を軽く見ているとこじれます。多くはまず行き渋りが出てきます。そこで無理をさせて学校へ行かせていると、子どもの心は傷つき、親にも不信感を抱くようになります。それが続くと子どもはどんどん苦しくなり、自分を守るために、学校へ行かなくなります。

 親からすればそこからがスタートかもしれませんが、子どもにしてみれば、不登校は苦しみの結果なのです」

 前兆への対応によって、その後の子どもの様子は変わります。読者の体験を紹介します(カッコ内の文末は回答者の子どもの不登校、行き渋り体験です。・一定期間不登校をしている・行き渋りをするので親が連れて行っている・行き渋りをするが、一人で登校する・過去に不登校、行き渋りがあった・不登校、行き渋りをしたことはないの5つから選んだ回答を明記しました)。

【こじれてしまった体験】

●3年生の夏休み明け1週間は登校していましたが、週明けの月曜日から行き渋りをし始めました。3週間ほど、親が付き添って登校をしたり、教室で横について授業を受けたり、保健室で付き添ったりしました。次第に「僕はいやなのにお母さんが無理やり学校で過ごさせようとしている」という被害者意識が強くなり、学校内でパニックを起こしたり親に暴力を振るったりするようになり、その後不登校になりました。学校との話し合い等で現在は登校しています。(38歳、女性、会計・法律関連、子どもは2歳と小3、過去に不登校、行き渋りがあった)

●3年生の2学期から行き渋りが始まりました。「どうして行きたくないの?」と、子どもの気持ちを聞きつつも、「でも学校は行かないといけないね」と、無理やりにでも行かせました。授業を受けても、具合が悪くなり早退したりして、結局学校に行けなくなってしまいました。(52歳、女性、業界団体、子どもは中1以上、過去に不登校、行き渋りがあった)

 子どもの前兆に気付き、ケアしたり気持ちを受け入れることで、いったんは不登校・行き渋りになっても短期で解決したり、徐々に登校できるようになったというケースもありました。

【専門家や祖父母とと連携して対応している例】

●1年の3学期から行き渋りが始まりました。最初は胃腸炎から。無理に行かせようにも、腹痛がひどくなるだけだったので、腹痛や頭痛を訴えるときは、まず痛いことを心配するようにしました。小2の息子は、腹痛のときにはお腹に蒸しタオルを当ててあげて、よくなるようにおまじないをするのが良く効きました (頭痛には首の後ろに蒸しタオル) 。

 最初は理由が全く分からなかったのですが、学校のお知らせで知った相談員に話をしたところ、学校は時間で動いているから、子どもにとってはとても疲れるところだと言われ、子どもが朝行きたがらないのも仕方がないと思えるようになりました。それから、家が安心していられる場所であるように、怒りすぎないことと、夫婦仲良くを心掛けました。行き渋りが終わったわけではないと思いますが、今はこれだけで、元気に通えています。

 相談するまでは、学校に行けない子どもに育ててしまったと、自分ばかり責めていました。しかし、相談がきっかけで、ゆとりを持って対処できるようになり、子どもの気持ちに寄り添ったことで、解決に導けたと思います。(43歳、女性、獣医療、子どもは小2、過去に不登校、行き渋りがあった)

●1年4月半ばから行き渋りが始まりました。登校前に腹痛を起こしたり、泣きながら登校したり、日曜の夜に泣き出したり、学校の話をしたがらなかったり、弟の保育園や学校の楽しい話を聞くと泣き出すといった前兆はありました

 担任やスクールカウンセラー、区の教育相談室の臨床心理士親に相談を続けていますが、教室前でバイバイしたら切り替わってる&いじめはなさそうだというの意見と、明るく帰宅する姿と友達や先生は嫌ではない・何で行きたくないか自分でも理由が分からないという子どもの意見から総合して、とりあえず登校はさせています。

 毎朝教室前まで送り届けていますが、行きたくない、という気持ちを否定せずなるべく受け止めるようにしています(内心イライラするときもありますが)。教室まで送り届けることを覚悟する。(43歳、女性、教育・教育学習支援関係、子どもは小1と小3、行き渋りをするので親が連れて行っている)

●1年生のゴールデンウイーク明けから行き渋りに。直後から夏休み前は、母(私)が付き添って登校し、保育園のように玄関で担任の先生に引き渡しました。帰りは近くに住む祖母または祖父が学童まで早めに迎えに行きました。徐々に学童の時間を延ばし、付き添う大人も、母→祖父母→友達のお母さん、と少しずつ遠い関係に変えていき、夏休み明けには大人の付き添いなしでも登下校できるようになりました。(42歳、女性 電気・電子機器、子どもは小4と小6、過去に不登校、行き渋りがあった・行き渋りをするが、一人で登校する)